小学生の時に出た若年コンクール
僕は自分に才能がないことを自覚した
そして彼が優勝した
彼はとても才能があると思った
彼自身の努力もあるけれど…それだけじゃないすばらしい技巧が彼にはある
僕は諦めた
諦めなければいけないと思った
中途半端な才能で弾いていても惨めだと思った
好きだから弾いていることが正しい?
僕はそう思わない
好きだからこそ、弾いているのが辛いんだ
自分が好きなものを美しく表現できない己の能力の限界に
努力だけじゃ補えない
狂おしいくらいに自分を呪いたくなる
僕はヴァイオリンを手放した
手放すことで、自分を保つことにした
僕は挫折したんだ
でも音楽に未練がある…
一度情熱を傾けた世界に…
狂おしく自分を呪いたくなった世界に…
僕はヴィオラを弾くことにした
少しでも関われるように
少しでも才能のなさを隠せるように
――聴いてもいないのに褒められるのは不快だ――
彼の言葉がズンと鉛を落とす
覚えていない…
当たり前かもしれない
だけど…それはあまりにも自分が惨めだ
それはあまりにも自分がかわいそうだ
僕の音楽を手放すキッカケを作った君に言われた…
僕の傷に
君は塩を塗るようなことをした
どんどん…広げていく…
君には音楽がもうあるじゃないか…?
君はまた僕の音楽を奪うのか?
日野さんを…
僕が恋焦がれた女神を…
許せない
許さない
許されない
君も僕と同じ痛みを味わえば良いのに
そして僕らは同等になる