偲ぶ華












「お前、なかなか良いカラダだな…」

情事が終わった後の香穂子の身体ラインをなぞるように手を滑らせていく


「結婚式が楽しみだな…ね…香穂子?」


「…………っ」



端正な顔立ちで優雅に微笑みかけられた笑顔が憎くてしかたなかった






柚木の車で家まで送られる

門の前ではちょうど火原が待っていた


「香穂ちゃ………え?」

何故、柚木と一緒にいるのか和樹はわからなかった


柚木が低い声で香穂子にこう囁く

「ほら…練習した通りにやってごらん?
 火原くんが大事で大事で仕方ないんだろう?」


柚木の言葉に顔を歪めながらも香穂子は和樹に向き合った

「あんな最低なことをしてたなんて、もううんざりだわ。
 私は梓馬さんと結婚するから。
 もともと、公家の血が流れてる私とあなたじゃ釣り合わないのよ」

一言一言に胸が締め付けられる

こんなことは思っていない

今でもあなたが好きだと伝えたい…


香穂子は涙を堪えるのに必死だった


「どうして?香穂ちゃん!
 会社なら、また一からやり直すよ?
 君が信じてくれるなら…オレはそれで良いんだ
 オレのこと信じられない?」


そんな目で見つめないで欲しい

無垢な瞳には誠実さしか感じない


「だから言ってるでしょ?
 釣り合わないのよ!あなたとじゃ!
 元からお遊びで付き合ってあげてただけ」


「香穂ちゃん……わかったよ…でも…オレ、香穂ちゃんのこと好きだから」

哀しそうな瞳をしながらも最後まで自分を想ってくれる和樹に
目頭が熱くなる


純潔さを失った自分はもう和樹に合わせる顔がない

できることは、柚木と結婚し、和樹の将来を安泰にさせることなのだ

和樹への想いを封印しなくてはいけない…


香穂子は和樹の幸せをひたすら願った



柚木と結婚をし、今では柚木家へと住んでいた

厳格な柚木の祖母は何故か香穂子を毛嫌いしていた

和樹の会社の記事は全てデタラメとされ、
以前のような勢いを取り戻している


香穂子にとって、それだけが日々の喜びであった



柚木との部屋のドアを開けると香穂子の宝石箱を開けて茫然としている彼に出会った


「これ何だよ…?」


柚木が手にしていたのはあの日、和樹からもらった大切な指輪


―――しまった


「俺はこんな安物…お前に与えたつもりはないんだけど」

「関係ないでしょ!返してよ!」

「ふーん」


次の瞬間には指輪は柚木の靴の下で形を無くしていた


「………最低」


これは和樹との唯一の思い出の品だったのに

香穂子の中に沸々とある感情が芽生えだす


「ハッ……最低なのはどちらだ?
 他の男からもらった物を大事に取っておく妻がいるか?」


優雅に手を組んで佇む柚木の目が厳しくなる


「……なんだよ、その瞳は」


ベッドに突き飛ばされると手首を頭上で拘束される


「お前は誰のものだかわかってないみたいだね…?
 良いよ……時間をかけてゆっくり教えてやるよ…毎日毎日ゆっくりな…?」



入れられる舌に…

体を貪られる感覚に…


香穂子は啼いて堪えるしかなかった













――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<あとがき>
ドロドロ街道まっしぐらです;みなさんが引いてないことを祈りつつ…