偲ぶ華












家族揃って朝食を取るが、和樹の件以来
気まずい空気が食卓に流れる


父は絶対に認めないと言い張る
母は父に従順だ…

兄も姉も応援してやりたいが…という感情であった

父の決定が全てなのだ


だが逆に父の心さえ動かせれば…

香穂子は、ひたすらそれを考えていた

火原は誠実でどこまでも嘘のつけない人…
そんな人柄を父もきっと気に入ってくれるに違いない




そんな矢先、驚くべきニュースが飛んできた


「香穂子、これを見ろ」

兄が持ってきてくれた新聞に香穂子は絶句した


『火原財閥不正取引か』


その記事には、火原が強引な手法で金を巻き揚げたこと
政治家との癒着などが事実として書かれていた


「信じられない…」


軽いめまいを起こした香穂子を兄が心配する


「火原財閥の株価が急激に下がっているらしい…
 このままだと倒産…業界からも抹殺されるだろうな」


あの和樹が頑張ると言っていたのは、こんなことだったのか

いや…あり得ない和樹はそんな男ではない

冷静を取り戻した香穂子の脳裏に浮かぶのはあの氷のような笑顔

――――和樹さんのことにやけに詳しかった……



家の車に乗り込むと行き先を告げる

「すぐに向かって!柚木侯爵のお屋敷へ」




「どうしたのかな?君から来るなんて珍しいね…」


相変わらず微笑みを湛えた柚木が憎らしくて仕方ない


「そういえば…あの記事にはびっくりしたよ。
 まさか火原くんがと思ったんだ…」


「あなたが仕組んだんでしょう!」


香穂子は思わず新聞を柚木にぶつけた


「僕が…?どうしてそんな風に思うのかな?
 そんな風に思ってたなんて心外だな…」

少し悲しそうな瞳をして香穂子を見つめ返す


「全部、演技なくせに!」


香穂子は感じていた柚木への違和感をぶつけた

和樹といるからこそわかる、偽りの笑顔

それがたまらない



「へぇ〜?やっぱりお前は変わってるな」

そこには以前見た冷たい眼差しの柚木がいた


「なかなか頭は良いようだね…だったら教えてやるよ
 お前の言った通り、火原への仕打ちは俺が仕組んだことだぜ?
 柚木家を甘く見てもらっちゃ困る。
 企業一つ潰すくらいどうってことないんだよ」


「ひどい!…許せない!」


「ハッ。お前が許そうが許すまいがそんなの関係ないんだよ。
 このままだと火原は終わりだな?かわいそうにね…」


「自分が仕組んだくせに何言ってるのよ!」


「あぁそうだよ?元に戻して欲しいか?」


髪をかき上げて気だるい雰囲気で香穂子に尋ねる


「当たり前でしょ!」

「じゃあ戻してやるよ…その代り対価が必要だぜ?」


そう言うと香穂子をベッドの上へと突き飛ばした


香穂子の上に覆いかぶさると深く口付けされる


「何するのよっ!」


唇を解放された香穂子は思いっきり柚木を引っ叩いた


「そんな生意気な態度とって良いと思ってるのか…?
 大事な火原くんが破滅するんだぜ?」


「っ……!」


柚木は笑みを浮かべると首筋に舌を這わす


服を脱がされて和樹でさえ触れたこともない場所を触られる


身体中を舐められて苦痛で仕方ない


「啼かないとつまらないだろう?」


柚木は不機嫌な顔をしながらも香穂子の体に自分の欲望を挿入した


「いやっ…いやぁ…」


香穂子は痛みと屈辱とで唇をかみしめた


目をつぶると、笑顔の火原が浮かんだ

彼にもらった指輪を見つめると涙が溢れて止まらなかった














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<あとがき>
えーーー何と言いますか、ドロドロです。
この先もっとドロドロになります…(遠い目)
…………火原っちと柚木さま、双方のファンの方、
本当にすいません(土下寝)←もはや土下座では済まされないため
ふざけんな〜っ!な気分になりましたら即読むのを中止してください。