〜梓馬side〜
香穂子が揺れているのが手に取るようにわかる
フッ…良い進歩じゃないか?
高校生の時は月森しか見えてなかった
俺をもっと意識しろ…
俺のことしか考えられなくなってしまえば良い
そうして俺だけの女になれ
お前が結論を出せないのなら相手から出してもらえば良いだろう?
今日、月森がここでコンサートをしてることは知っていた
俺は偶然を装って彼に近づいた
「あぁ月森くん、偶然だね」
「……柚木先輩お久しぶりです」
相変わらず気に入らない奴だ…
何もかも手に入れたような顔をするな
お前の愛しの女の正体を、今バラしてやるよ
「コンサート、いつも大盛況だそうだね。
今度うちの会社のコンペでも演奏してもらえないかな?」
俺はあくまでも表向きの態度で接する
「君のヴァイオリンの音色がとても素晴らしいって親族の間でも評判なんだよ?
そんな君が後輩だなんて僕も鼻が高いよ」
「自分は…そんな褒めて頂けるほどでは…まだまだ練習が必要です」
あくまでも淡々と話す月森
「そうそう、君が大切にしてるもう一つの音色もとても格別だったよ?」
「もう一つの音色?」
愛想笑いも浮かべない月森にこう囁いた
「彼女…とてもイイ声を奏でるんだね…」
俺は月森から離れてほほ笑むと
「それじゃ、練習頑張ってね…」
青ざめる月森を残して俺はその場を立ち去った
どうだ月森蓮?
好きな女を他の男に穢された気持ちは?
俺はずっとその想いを抱いてきた…
お前も苦しめば良い
そうして香穂子にこう言え
――君は俺の女じゃないと
――君に裏切られたと
――君と別れたいと――
その呪文の言葉で香穂子は俺を選ぶ
寂しくて寂しくて俺から離れられなくなる
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<あとがき>
自分で書いててゾクッとしちゃいました(笑)ブラック降臨です♪