紫陽花









〜香穂子side〜




久々の蓮くんとのデートはコンサートだった

「どうだっただろうか?」

「うん、聴いててとっても勉強になったよ」

「そうか…それなら良かった」

蓮くんが私に微笑みかける


その真っ直ぐな瞳は今は私の罪悪感を増長させるものでしかない


――私は蓮くんを裏切っている――


―「お前は“蓮くん”を裏切ってない」―


苦しくて仕方ない



「香穂子、俺はここで」


家の前まで送ってくれた蓮くんを私は引きとめた


「待って…帰らないで…」


「香穂子?」


「蓮くん、泊まって行って」

蓮くんに抱きついて背中に手を回した


「香穂子…女性が…そんなこと言うものじゃない…」

「どうしてよ?私は蓮くんの彼女でしょう?」

「俺は君が好きだ…だから君を大切にしたい…君を壊したくないんだ」

蓮くんは優しく微笑みながら頬を撫でてくれる

「蓮くんになら壊されて良いから…だから…抱いて?」


彼の眉が顰められた

「どうした?君はそんなこと言ったことはないだろう?」


――どこまでも澄んだ彼の瞳……


私は蓮くんから離れた


「ごめんなさい…どうかしてたみたい…」


「いや…謝らせたいわけじゃないんだ…すまない。
 ただ、これだけはわかってくれないか?君が大事なんだ」


「うん、わかってる。蓮くんが私のこと大事に思ってくれてること。」


――そう、わかってる…わかってるんだ


「良かった……香穂子好きだよ…」


蓮くんは微笑んで帰って行った





彼は私を理想化してる

私を穢すまいとしてる…

だけど私は知ってしまった…自分の中にある淫らな欲望を







「疲れた…」

今日も先輩は私の部屋にやってくる


「なに?月森くんとケンカでもしたの?」

「え?何でですか?」

「なんとなく」


先輩は人の心を見通す

だからこそ、それを巧みに使って違う自分を演出できるんだろう


「もう…終わりにしたいんです」

私はずっと考えてたことを切り出した
もう蓮くんを裏切りたくない…


「なにを?」

「決まってるじゃないですか!私達の関係ですよ!」


「何言ってるの?俺はお前の恋人でもないよ?何を終わらすのさ?」

先輩は相変わらず余裕の笑みを浮かべて私を見る


「俺たちは恋人じゃない。何も始ってない。だから何も終わらないんだよ?」

「じゃあ、もう来ないでください!先輩と会いたくありません!
 私は蓮くんが好きなんです!」


先輩が蔑むような目で私を見下ろす


「そう……もっとカラダにわからせてやろうか?俺と会いたくないかどうか…」




先輩の口付け…先輩の指使い…

もう全てが私を狂わす…


何も考えられない…







先輩が私の耳元で囁く

「ヨカッタんだろ?」

私の頬がかぁっと熱くなる

「無駄なプライドなら捨てろ。そのまま自分の気持ちに正直になれ
 お前の音楽のように」


私はシャツを羽織ってベッドから抜け出す

「私には蓮くんがいるんです!そんなことできません!」



先輩が声を上げて笑いだした

「何言ってるんだよ?現にこうして俺に抱かれてるじゃないか?
 さっきまであんな声をあげてたのは誰だ?お前だろ?
 今さら蓮くんだ?笑わせるな」


先輩に後ろから抱き締められる

「香穂子…俺は独占欲は強いんだ…俺だけの女になれ」

首筋を伝う先輩の舌にゾクっとする


――「俺だけの女になれ」――

さっきと違う…
なに勝手なこと言ってるんだろう

こんな強引な先輩に…私は何故か魅力を感じてしまった

苦しい…


誠実な蓮くんが好き…


強引な先輩に流されてしまう




どうしたら…どうしたら良い?






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<あとがき>
「どうしたら良い?」どうしようもないです!(笑)
だって選べないもん!(暴走)




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