紫陽花









〜梓馬side〜



あいつと会うのも5年ぶりか…

バカらしい…今も月森を好きだなんて…

俺の気持ちに気づきもしないで
まだあの男を想い続けているのか



高校生の時、俺はあいつに惹かれた
どこまでも素直で…
バカみたいに反応を返してくるのが良かった


陽だまりのような温かさが
何もかも諦めていた俺に希望を持たせた
本当の俺をすんなりと受け入れたあいつに





ヴァイオリン・ロマンス

あいつが選んだのは月森蓮だった

俺はお前しかいなかったのに…
こんな俺を見せられるのはお前しかいなかったのに…


希望を持たせて他の男を選んだあいつを憎らしいと思った
そして、今回もそうだ


――好きな人の前なら素直になれますよね――

お前は今回も俺に希望を持たせて裏切るんだ
月森への想いを俺に見せつけて



だから壊してやった…
あいつに気持ちだけではどうしようもない快楽を教えてやった

俺をねだるあいつの瞳…鮮明に焼き付いている





俺の中で封印していた想いが解放された


いや…日野と再会した時からもう解放されていたのかもしれない


相変わらず無邪気で陽だまりのようなあいつ

俺の暗い闇が救われていく気がした


傍に置いておきたい…


俺の傍に…





「お帰りなさい、あなた」

「ただいま」


俺は取引先の令嬢と結婚させられた

それで会社の一つを任されている



この女に何の感情も抱いていない


気が向いたら抱く

でも今日はそんな気分にはならない…他の女は抱きたくない


香穂子の感触を体が覚えている



欲しいものは何でも手に入る…ただ香穂子を除いては…


手に入れたい…


俺だけのものにしたい





〜香穂子side〜



「先輩っ…先輩っ」

今日も私たちは獣のようにカラダを重ねる

先輩と迎える一瞬はとてつもない快楽を私に与えてくれる

この人はわかってる…女がどこを好きか…

「なぁ…俺の女になれば?」

行為が終わった後のけだるい雰囲気の中、先輩が唐突にそう言った

「なに言ってるんですか?先輩結婚してるじゃないですか?」

「勘違いするな。誰が妻にするって言った?女になれって言ったんだよ」


――つまり…愛人?


「愛人でもないよ?そうだな…俺のお気に入り?」


――は?意味がわからないんですけど


「フッ…お前はホント顔に出るね。お前はどんなモノにも代え難いだけだよ
 俺のお気に入り。俺のトクベツ」

「わかるか?」と髪を撫でられた

わかるわけがない…
何言ってるの?何が言いたいの?


「お前だってそうすれば“蓮くん”に負い目がないんじゃないの?」

「なに言って…!」

「そうだろう?蓮くんを裏切ってしまったどうしよう?って顔だぜ?」


指で私の唇をなぞりながら柚木先輩に見つめられる


「お前は“蓮くん”を裏切ってない」


「そうだろう?」先輩は優雅な笑みで私に頬笑みかける

悪魔に魅入られてしまった私は頷くしかなかった






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<あとがき>
策士・柚木梓馬始動開始です♪
柚木さまのこういうトコが好き…vv全く意地悪とも思いません!
やっぱ色気がある人は良いわ…好きだわ…vv
ある意味、上みたいな関係は魚月好きですよ〜
「彼女でもない、妻でもない、俺のトクベツ」一番ラクですね。




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