君のトナリ









〜蓮side〜



香穂子の伴奏で第一セレクションのテーマの曲を練習する

演奏者の意図を把握して合わせるその技術力
やっぱり…香穂子の音を諦められられない


「香穂子…気を悪くしないで聞いてくれ…。俺は君に伴奏して欲しいんだ」

「……蓮くん、無理だよ…人前でなんて…ましてやコンクールに出るなんて」

「しかし、あの時とは違うだろう?君は伴奏者だ。だからもっと軽い気持ちで良いんだ」

「………蓮くんらしくないよ。軽い気持ちなんて。音楽は真摯な態度で臨むものなんでしょう?」

「そうだが…その…」

香穂子が俺の手を握りしめる

「蓮くんが、私にそれをキッカケにまた戻れるようにってしてる配慮、わかってるよ?
 でもね、私は蓮くんに最高の演奏をしてもらいたい。
 私のこと気遣いながらの演奏じゃ、実力が発揮できないでしょう?」

俺も香穂子の手を握りしめ返す

「………わかった。必ず優勝する」

「気負わなくて良いよ。ただ蓮くんの努力を無駄にしたくないだけ。」

俺を気遣ってるのは香穂子じゃないか…俺は香穂子の髪を撫でながらこう宣言した

「……コンクール、俺は香穂子のために弾く。
 君の痛みが消えるような演奏をする。君の中のコンクールを良い思い出に塗り替えるから…」

「うん…楽しみにしてるね」


香穂子は気負わなくて良いと言ったが
俺は香穂子のためにも、自分のためにも絶対に優勝してみせる




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

それから第一セレクションが始まった


段々と俺の番が近づく…

次はこの間の男―――土浦梁太郎の番だ

彼の奏でるのは「幻想即興曲」…実力的にかなりのものだと思う

だが俺は負けるわけにはいかない

俺が優勝して香穂子の思い出を塗り替えるんだ

香穂子と俺はずっと一緒に練習してきた…

香穂子が言ってた

「独りで弾いてる時も二人で弾いてるみたいに感じるの」

だから香穂子の代りに俺が弾く

俺たちは一人でいてもずっと一緒にいるのだから





「蓮くん第一セレクション優勝おめでとう♪」

「ありがとう」


母さんがまた海外に行って平穏を取り戻した俺の家で香穂子がお祝いをしてくれる


「しかし、まだ第一セレクションが終わっただけだから…他の出場者も場に慣れてくるだろうし
 次のセレクションでも更に気を引き締めなくてはいけないな」

「かたーーーい!!もう、今日ぐらいパァァっと盛り上がろうよ
 パパも美沙ママも、喜んでたよ」

「え?もうあの人たちに連絡したのか?」

「当たり前じゃない。写真も報道部からもらって添付しといたもん。」

香穂子はこういう時は抜かりがない…他のことでは抜けてるくせに


俺は香穂子に改めて言う

「ありがとう」

「え?写真送ったことそんなに嬉しかったの?」

「違う!それはどちらかと言えば不快なことだ。
 今日優勝できたのは、君の力でもあるから」

「私の力?」

「伴奏してくれてる香穂子を思い描いて弾いた
 俺が独りで弾いてる時、君も一緒に弾いていた…だから優勝できた」


香穂子は驚いて目を見開く

「私も蓮くんと舞台にあがってる気分になった。ありがとう蓮くん。」


そう言って、はにかんだような笑顔を向ける

俺は君の笑顔が見られれば満足だ…君の笑顔が何よりも嬉しい

「今回のコンクールにゆ…優勝したら香穂子に話したいことがあるんだ」

「なぁに?」

「それはっ優勝してからのお楽しみだから///」

「だって気になるもん。今言ってよ」

「今は…今はその…俺がまだダメなんだ。コンクールできちんとした結果を残してから話すから」

「わかった。何だかよくわからないけど、蓮くんがそう言うならよっぽどのことなんだね。
 その時まで待ってる」

「あぁ…///」


俺は香穂子にずっと言えなかった言葉を言うつもりだ
今の二人の関係を更なるものにしたいから




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<あとがき>
きゃーーーvvあまい!あまいぞ月森蓮!!(自分で書いて大暴走中)
しかし最近ドロドロしか書いていなかったので、きちんと甘酸っぱくなってるか
心配です(:;)


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