君のトナリ








〜香穂子side〜




ついてない…
授業中に蓮くんへの誤解を解こう作戦を考えていたら
呼ばれてるのに気付かなくて…教材運びを言い渡されてしまった

しかも音楽科まで…遠い

まぁ、ついでだし蓮くんのトコに寄ってこうなんて考えていたら





「っ!俺は絶対に参加しないからな!」

音楽準備室からすごい怒鳴り声が聞こえる


好奇心に負けてチラっと覗くと…

そこには数名の音楽科の生徒と1人の普通科の生徒
そして、やる気のなさそうな先生がいた


「なこと言ってもしょうがないだろう…
 お前さんの演奏を知ってる音楽科の教師の指示で決まっちまったんだから…」

やる気のなさそうな先生が諭しながらタバコに火をつけようとするのを
優雅な人が禁煙ですよと止めてる


「もう俺は人前でピアノは弾かないって決めたんですよ。」

その言葉に私の胸もチクリと痛む


「……やる気のない奴にやられても迷惑だ。コンクールの質を落としたくない。
辞退で良いんじゃないですか?」



あ…蓮くんだ…相変わらず、自分にも他人にも厳しいんだから…まぁ蓮くんらしいか




「あ?コンクールがそんなに大切なのかよ?」

「そういう問題じゃない。中途半端な気持ちと実力の者に参加する資格なんてないということだ。
 中途半端な実力で参加されると迷惑だ。」



――中途半端な実力で参加されると迷惑だ――
“あのこと”で弾けなくなった私のために言ってる…




「っだと!………わかったよ。俺が中途半端な実力じゃないってことわからせてやる」



そう言い放つとその普通科の生徒が出てきた



「あ、土浦くん!」

「あ?あ〜昨日のドジな奴か」

「ちょっと!私は日野香穂子!!」

悪い悪いと頭をガシガシ撫でられた…





「香穂子…?」

蓮くんが私に気づいて声をかけた

「蓮くん!」


蓮くんを見た途端に土浦くんの表情が険しくなる

「じゃ、日野、俺はこれで」

土浦くんは蓮くんを睨みつけて去って行った





私は土浦くんのことを気にしながらも蓮くんに歩み寄る


「コンクールのこと?」

「あぁ…聞いていたのか?」

「えへ…気になって立ち聞きしちゃった」

「嫌なこと…思い出さなかったか?」



蓮くんが心配そうに私を見つめる

「大丈夫だよ…それに…蓮くんありがとう。蓮くんの言葉、嬉しかったよ。」

「いや…別に大したことじゃない…///」



「だーけーど、ケンカはダメだよ?土浦くんだって私みたいな事情があるのかもだし…」

「香穂子の方が辛いに決まってる。」

「また…そうやって…」

蓮くんが私の手をきゅっと握り締め、視線を合わせるように腰を屈めた


「他の奴のことはどうでもいい…香穂子の痛みに比べれば大したことがない…
 君の苦悩は俺が一番わかってる」

「うん…蓮くんがあの時、半分にわけてくれたんだもんね」

「もっと俺に、君の痛みがくれば良いんだが…」

「ありがとう…その言葉だけで十分だよ」

蓮くんはふっとほほ笑むと頬を撫でてくれた



「香穂子…すまないが、今日は家でも伴奏つきで合わせたいんだが…その…」

「うん、言ったでしょ?蓮くんの前では弾くって。じゃあ蓮くんの家でご飯も一緒に食べようね」


また後でと、私は手を振りながら蓮くんと別れた


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<あとがき>
きゃっ///書いてて自分でときめいちゃいました♪あ…皆さんひかないでください…;


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