君のトナリ








〜香穂子side〜





「蓮くーん、起きてる?」

「っ!起きてる…香穂子こそ、その勝手に俺の部屋に入ってくる癖、どうにかならないのか?」

「勝手に入ってないもん。ちゃんと美沙ママに面倒見てって言われてしてるんだもん。」

「それにスカーフぐらい締められる。君こそ数学の課題は持ったのか?」

「もっ…持ったよ!忘れるわけないじゃん!」

「そうだろうか…?じゃあこれは?」

と蓮くんの部屋に置き忘れられていたノートを見せられる

「あっ!」

蓮くんはしてやったりの顔で、私を見てる


――ううっかわいくない


昔は何をするにも“香穂子ちゃんと一緒が良い”って泣いてたくせに



「遅刻してしまう」

蓮くんの声でふと我にかえると一緒に学校へと向かった

二人で登校するとエントランス前には人だかりが出来ていた

「何だろうね〜?」

私は掲示板を覗き込む

「星奏学院 学内コンクール参加者」

そっか〜そんな時期なんだ。
音楽科の蓮くんから学内コンクールのことは聞いてる


――あっ蓮くんの名前もある




「おっ月森、コンクール出場らしいな」

「月森くんおめでとう」

周りの音楽科の人たちが蓮くんに声をかけてる


「別に…出場者に選ばれただけだろう」

周囲に気まずい雰囲気が流れ出す



「蓮くん……」

「香穂子行くぞ」

「うん……」

仕方なく蓮くんに連れられてその場を後にする
気になって振り返ると…やっぱりコソコソ何か言われてるんだ…



私は通路でたまらず蓮くんに注意した

「さっきの…ああいう言い方はダメだよ。嫌われちゃうよ?」

「俺は別に好かれようと思っていない」

「無理に好かれなくても良いけど、嫌われないにこしたことはないでしょ?勿体ないよ」

「君に嫌われなければ良い。それだけだ。」

「蓮くん」

「じゃあいつもの時間に待ってるから…」


私は蓮くんの背中を見送る

いつも蓮くんのことが心配になる

蓮くんは、“月森”で評価されることを嫌ってる
今までもいっぱい妬みや嫌がらせがあったこと、私は知ってる

だから、蓮くんは他人にあまり心を開かない

音楽科でも上手くやってるのだろうか…

前に行ったときはあんまり仲良い人とかいないみたいだったし…
また知らないところで嫌がらせされてなきゃ良いけど…

蓮くんは慣れてるって言うけど…そんなことあるわけないから
努力してる蓮くんをどうか誰も傷つけないで欲しい…



「学内コンクール…何もなければ良いけど…」

ただただ祈るばかりだった




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