君のトナリ













〜香穂子side〜



土浦くんは優しい

一緒に居て男の子だなぁって本当に思うし


「おい…こんなトコにいつまでいる気なんだよ」

少々怒ったような顔をしながらクレープ屋に居座る私を注意した

「土浦くんだって何か頼めば良いじゃん。
 甘い物が苦手ならコーヒー飲めば良いでしょ?蓮くんならいつもそうしてるよ?」

「………」

土浦くんは軽く私を睨みつけると、コーラを買ってきた


「やっぱりこういう季節には甘いものだよね〜」

って私は一年中なんだけど…


「それ食ったら本屋に行くからな」

土浦くんが私を見ないで言った

「え〜っ。この近くにかわいい雑貨屋さんがあるのに!?
 いつもはそこに寄るんだよ?」

「っ!お前な、いい加減にしろよ。どんだけお前の都合に付き合ってやったと思ってるんだよ?
 絶対次は本屋だからな!」

「土浦くんのけちぃ!いいじゃん少しだけだから!」

「お前な…それはお前のワガママって言うんじゃねーのか?」


しばらくの押し問答の末、結局本屋に行くことになった


蓮くんだったら、雑貨屋にも行ってくれるのに…

『俺は特に行きたい所はない君の好きにすれば良い』

そう言ってどこでも付き合ってくれるのに…
蓮くんが行きたいといえば、楽譜探しとか楽器屋にも行くけど

私はまだ、クレープ屋と服屋にしか行ってない

こんなことでワガママなんて言われるなんて…!

蓮くんならそんなこと言わないのに



土浦くんは欲しかった本が見つかったらしく上機嫌だった

「なんだよ…雑貨屋に行かなかったことスネてるのか?
 ガキだな〜お前。」

「べっ別にスネてるワケじゃないもん。
 先週あったのが売り切れてたら困るなぁって思ってただけだし」

「そういうのをスネてるっていうんだよ…
 仕方ねぇなぁ…行ってやるよ…」

なにその嫌々行くみたいな行動
しかも思いっきり子ども扱いされた


結局、私の雑貨は売り切れちゃってて


「あ〜ぁっ残念…」

「結局何が欲しかったんだよ?」

私は土浦くんに聞かれるままに答えた

「うさぎさんの耳あてだよ!
 耳の部分がうさぎさんになっててめちゃくちゃかわいいのっ」

あれはかなり前から狙っていたのに!とかなり残念がる私に

「お前、ホントガキなのな〜高校生だろ?」

土浦くんにガシガシと頭を撫でられた。


今日も蓮くんの家まで送ってもらったけど、私はモヤモヤするものを抱えていた。


蓮くんの部屋に行くと蓮くんは今日も楽譜を前にヴァイオリンを構えている


「おかえり。楽しかったのか?」

「うーん」

どちらとも取れない返事をしてクッションに座ると
テーブルの前にあの雑貨屋の包みがあった

「蓮くん!何これ!」

誰かにあげるのかな?

「それは君にだ。昨日、通りかかったから買っておいた」

包みを開けると、あのうさぎの耳あてだった

「欲しかったのだろう?何度もあそこには通わされたからな」

蓮くんが苦笑する

「蓮くん大好き!」

私は後ろから蓮くんに抱きついた


何だろう?この感覚…私はわからないまま、
あの日を迎えるまで心の中にモヤモヤを宿したままでいた














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<あとがき>
うさぎの耳あてが欲しかった魚月です。
さすがに歳なのであきらめました(苦笑)






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