君のトナリ













〜蓮side〜



「蓮く〜ん!」

ホームルームが終わると共に香穂子が俺を迎えにきた

荷物をまとめると、香穂子が待つ廊下へと向かう

ただ、香穂子の後ろには願いたくば会いたくない人物が立っていた

ブスッとした顔で立っている土浦はいかにも面白くなさそうだった

だが、それは俺も同じことだ

俺と香穂子の間に割って入ってきたくせに…


「何故…君がいる?」

俺は不快感を露わにした

「仕方ないだろ?香穂がお前と帰るって言うんだから…」

「“香穂”?それなら一人で帰れば良いだろう?」

「お前に言われたくねぇよ」


「ちょっとケンカしないでよ!」

香穂子のその言葉で俺と土浦はお互い違う方向を向く



香穂子をファーストネームで馴れ馴れしく呼ぶことが俺を不愉快にした


3人での帰り道はひどく苦痛だった

周囲からは好奇の目にさらされた
確かに俺と土浦がいるなんて変な取り合わせだからなのだろう

だが俺から言わせれば、邪魔なのは土浦だ。
俺と香穂子の中に割って入ってきたくせに
この言葉が繰り返された。


「じゃあ土浦くん、ここで」

香穂子が俺の家の前で土浦に別れを告げる


「おい…でもここ月森の家なんじゃないのか?」

表札を見ながら土浦がそう言った


「そうだけど?」

香穂子がきょとんとした顔で土浦を見る


「“そうだけど?”じゃねぇよ。何でお前が月森の家に帰るんだ?」

「何でって…前からそうだし…」

香穂子は返答に困っていた

困る必要なんかない…俺達にとっては当たり前のことなんだから


「君には関係ないだろう?」

俺が土浦の質問をそう打ち切った


「香穂子、練習する時間がなくなる。早く家に入ろう」


香穂子の手を引いて家の中に入れた


「何か変なのかな?」

家の中に入った香穂子が俺に尋ねた


「別に変なことではない。俺はそう思ってる」

「でも…土浦くんが…」

「土浦のことなんて…っ!」

俺の口調がついキツくなった

「心配しなくても大丈夫だ…何も変ではないから」

できるだけ不自然にならないように努める

「うん……」


香穂子が納得がいってないという顔で頷いた


「あ、そういえば今日ケーキが届くんだって!
 ママのお友達が贈ってくれるらしいよ〜」


香穂子が靴を脱ぐとリビングへと走って行った


そんな無邪気な背中を見ながら、
どこまで俺はこの胸の痛みを我慢できるのだろうと途方に暮れるばかりだった













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<あとがき>
君のトナリ人気があるので2話同時アップです〜
そして、8万お礼作品の代わりとさせてください←話浮かばなかった人







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