〜香穂子side〜
「土浦くん、この間の話だけど…いいよ」
付き合うとか、そういうのを口に出すのが恥ずかしくて変な答え方をしてしまった
目の前の土浦くんは顔を赤くしてバツが悪いみたいに落ち着かない様子だった
蓮くんは付き合うことに賛成だった
だからこれで良いんだ…
『それに君が土浦にときめいたということが、土浦を好きだという何よりの証なんじゃないのか?』
蓮くんの言葉が思い出される
そうだ…これで良いんだ…
「日野…」
土浦くんに抱きしめられた
広い胸に包み込まれる
土浦くんは男の子だと思った
蓮くんはもっと細い
抱きしめられる時ももっと弱い力だった
だけど…胸板は蓮くんの方があるかも…
土浦くんに抱きしめられているのに蓮くんのことばかり思い出してしまう
「日野…じゃないな……香穂」
「え?」
私はきょとんとして土浦くんを見た
「なんだよ!見るなよ」
照れているのか拗ねたような顔をしている土浦くんはかわいかった
「だって真面目な顔してそんなこと言うから」
「悪いかよ。女はそういうの好きだろ。名前で呼ばれるのとか」
私を抱きしめる手を離して土浦くんが頭をかいた
「ぷっ…土浦くんでもそういうこと気にするんだ。
蓮くんならよくそういうことは言ってくれるけど“女性が好むものは”って」
明らかに照れている土浦くんを前に私は笑ってしまった
「うるせぇ。おい帰るぞ」
土浦くんが私の手を握った
「ごめん。私、蓮くんと帰る約束してるから。帰るなら蓮くんも一緒だよ?」
「は!?冗談じゃねぇ!月森なんかと一緒に帰れるわけないだろ。」
「でも蓮くんとはずっと一緒だったもん。」
「はぁ…わかったよ……」
私はそう言って音楽科へと歩を進めた
後ろで聞こえる土浦くんのため息の意味なんてさっぱりわからなかった
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<あとがき>
つっちー、魚月はつっちーも好きだよ。←求められていない告白