〜香穂子side〜
――香穂子、おはよう――
「蓮くん」
そこは自分の家で…
蓮くんと一緒に歩くことも…挨拶を交わすこともなくて…
つらい…
寂しい…
いつもいた人が突然いなくなってしまって
蓮くんは当たり前にいたのに…
もう取り返しがつかないの?
前みたいに微笑んでくれないの?
あの笑顔が見たいのに…
寂しい…
どうすればいい…?
どうすれば…
どうしたらいつも隣にいた大切な人を取り戻せるの?
当然、チアの練習もまったく身に入らなくて…
「香穂子〜っ?どうしたの?心ここにあらずって感じじゃない?」
「理奈…」
理奈はうなだれてる私の隣に座ると頭にポンと手を当てて聞いてきた
「もしかして、王子様と何かあった…とか?」
「えっ…うん、まぁそうなんだけど」
「なに?なによ、やっぱり遂になんだ?きゃー」
私には理奈が興奮している意味が全くわからない
「な…なにが?」
「違うの?とうとうしちゃったんでしょ?」
「まぁ…ケンカしちゃったんだけど」
「はぁ〜なんだぁ、ただの痴話ゲンカ?つまんない」
私は何とか『人が悩んでるのにつまんないって…』という言葉を飲み込んだ
「とうとう、一線を越えた仲になっちゃったのかと思ったよ。
で、今日はそれで疲れてるのかと思ったのにさぁ」
「一線を越える?疲れてる?」
私は若干、上ずった声で理奈に尋ねた
「だってあんなに一緒にいて、王子様が何も感じないハズないし。
確かにガツガツしてなさそうだけど、王子様も男だしね」
「え…どういうこと?」
「もしかして本当にわからないの?
王子様が香穂子にしたいこと?」
「蓮くんがしたいことって…っ!」
言うが早いか理奈が私の胸を鷲掴みしてきた
「なっ…なっ…?」
狼狽してる私をよそに理奈は胸から手を放すとサッと立ち上がった
「なーんかまた大きくなったんじゃない?
うらやましいなぁ」
いや、そういうことじゃなくて!
「ちょっ…ちょっと!蓮くんとそれと何が関係あるのよっ」
「もー、だから王子様がこういう気持ちだってことを示してみたんだけど」
私は理奈にならって立ち上がる
「男がしたいことなんて、こんなことに決まってるじゃない?
話聞いてると、香穂子って平気で泊まったりしてるんでしょ?
今まで何もなかったってのが不思議よね〜」
信じられない…私の心の中はこれで一杯だった
理奈が、で何でケンカしたの〜?と聞いてきたけれど
私は何も答えられなかった
――俺だって男だ…ずっと君を女の子として見てきた…君にどんなことだってできる
私の中で一つになった…
蓮くんが言っていたことが初めてわかった気がした
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<あとがき>
今回は鈍い香穂ちゃんに気持ちを理解してもらう回に☆
でも、心なしか上手く表現できず…orz