~蓮side~
「別に触っても良いよ。だって幼馴染の蓮くんだもん。」
昨日の香穂子の言葉が頭にきて、今日は一人で登校した
彼女は俺を全く男として見ていない
確かに家族のように生活してきた…だけどあんまりじゃないか
俺はずっと君を一人の女の子として見てきたというのに
――仕方ないか…香穂子は鈍感だから
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれは中学一年の時だった
俺の入学式と日にちが違ったから香穂子の学校に行ってみた
案の定、香穂子の周りには数人の男が群がってた
―告白する気なんだろうな
俺は直感でそうわかった
「香穂子」
「蓮くん来てくれたの?」
俺はすかさず香穂子を抱きしめて周囲を威嚇する
「他の男となんか話しないでくれ」
「?なんで?」
「なんでも」
「無理だよ…そんなの。クラスメイトなのに」
「ダメったらダメだ!話したら…」
「話したら?」
「泣くからな!」
「何それ!?」
香穂子は俺が泣くと必ず言うことを聞いてくれた
でも、そんなの本当に子どもの頃の話なのに
我ながら言ってて恥ずかしい
俺はバツが悪くなって口を押さえて香穂子から目を逸らす
「あははは」
やっぱり笑われた
「わかった。蓮くんは泣き虫だからね。言うこと聞いてあげるよ。」
香穂子は優しく笑ってた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
香穂子が俺を男として見られないのは俺にも原因があるか…
あの頃は言葉足らずで香穂子に自分のことをうまく伝えられなかった
だけど今ならこの気持ちをきちんと伝えられる
次回のコンクールのことで今日は放課後、伴奏者も含めて集まることになっているし
その時にでも香穂子と仲直りしようと思った
~香穂子side~
「日野、音楽準備室まで行くんだろ?一緒に行こうぜ。」
「うん」
放課後、土浦くんに呼び止められる
まただ…ドキドキするよ…
「あのさ…聞いても良い?土浦くんもコンクールで何かあった?」
「…あぁ、お前になら話しても良いかもしれない。
昔出たコンクールで正当に評価されなかったことがあったんだ…
それから俺は人前でピアノを弾くのをやめた。
音楽に絶望したっていうか、コンクールなんてアホらしいってな。」
「そうなんだ。私と一緒だね。私の場合はケガしちゃって弾けなかったんだけど…」
「このコンクールでお前と出会えて良かった。」
「えっ?///」
「そういうのが俺だけじゃないってわかったからさ。」
―な…なんだそういうことか…ってえっ?
「あとはリストを乗り越えるだけだな」
「リスト?」
「俺がコンクールで弾いたのリストの“ラ・カンパネラ”だからさ」
「私もリスト。“ため息”だけど」
「何か似てるな」
「そうだね~だからか、土浦くんと雰囲気とか音楽が似てるって思ったんだよね」
「だけど、俺はお前みたいにコケたりはしないけどな」
「もぅ!そのことは忘れてよ!」
大きな手…
土浦くんって男の子なんだな……
蓮くんの手はあんなにキレイなのに…
~蓮side~
「―以上。じゃ、帰っていいぞ~」
金澤先生がやる気がなさそうに対応する。
俺は香穂子に声をかけようと思った
だけど、香穂子は土浦ー他の男しか見てなくて
じゃれあいながら消えていく
俺は無表情でその様子を見ていたが、頭がおかしくなりそうだった
「…土浦くんと日野さん、仲が良いよね」
気配なく話しかけてきたのは柚木先輩だった
「やっぱり同じピアノだからかな?
でもそれだけじゃなくて…通じ合ってるものがあるよね。
土浦くんも日野さんもコンクールにトラウマがあるみたいだし、
お互いの傷のことがよくわかり合えるのかもしれないね。
たとえ短期間でも…ね?」
香穂子にピアノを弾かせるんじゃなかった
俺は初めて後悔した
********************************************
<あとがき>
れんれん、いいのか???そして、つっちーが香穂ちゃんの中でどんどん大きい存在に
そしてそして、柚木梓馬!!かっこいいぞ!!ビバ☆ブラック(←落ちつけよ…)