Point of No Return〜戻れない路〜












〜梁太郎side〜


俺は月森のことを何も聞かなかった


ただ、毎日のように香穂子を求めた…とても激しく
まざまざと見せつけられたあの合奏が悔しくて仕方ない

こいつは俺のものだと自分に言い聞かせながら抱いた
香穂が自分に反応することがそれを裏付けているように感じた






大学でいつものように練習をしようと練習室へ向かった

俺は最も会いたくない人間に会ってしまった



「……月森」


「なにか?」


その涼しい顔が癪に障って仕方ない


「お前、香穂になにか言ったのかよ?」

「君には関係ないだろう…」

「関係あるんだよ!あいつは俺の女なんだから!」

「そういう言い方はやめてくれないか?
 香穂子が貶められている気分だ。」

「っだと!」

俺はカッとなって月森の胸ぐらを掴んだ


「そうやってすぐ感情的になるのもどうかと思う。
 今、君が俺に喧嘩を売った所で周囲から批判されるのは香穂子なんじゃないのか?」

月森は顔色を変えず淡々と言い放つ
確かに周囲には人だかりができている
俺は仕方なく月森を放した


「君も変わっていないな…」


そう言い放つと月森は練習室へと入っていった



――君も?



香穂も変わってないってことか?
香穂の想いも変わってないってことか?


女々しく考えてる自分がらしくない


俺の中の黒い塊がどんどん増殖する


「ちくしょう!」


俺は自分の思いのたけをピアノにぶつけるしかなかった










〜蓮side〜



―あいつは俺の女なんだから




練習室に入った俺に土浦が放った言葉が心に突き刺さる


そう言えたらどれだけ良いだろう

もう俺には言えない言葉だ


香穂子…君を手放すんじゃなかった

待ってろと言えば良かった


今更後悔しても仕方ないのに…




―月森くんはどうしていつも勝手に決めちゃうの?―




香穂子の言葉が反芻する

俺は君の気持を考えていたようで…何も考えていなかったのだろうか…



―待ってろって言ってくれたら私は…―



君は今、俺のことをどう思っているのだろう…










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<あとがき>
アツくなる土浦くん、好きです!屋上で蓮くんの胸ぐらを掴んだ時、ときめきました…☆ 物語はいよいよ佳境に入ってきます〜〜〜〜!


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