Point of No Return〜戻れない路〜












〜香穂子side〜


「もうこんな時間」

梁はご飯を作って待ってるって言ってた

練習を切り上げて、帰り支度をする


♪〜〜〜〜〜〜〜



廊下から流れてくるのは彼のメロディー


私は自然とそちらに足を向けてしまう


凛と佇む姿に
演奏する時の伏目がちな瞳…

とても色っぽくて…彼から離れられない



「君か…」

穏やかな笑顔でほほ笑まれる


「ごめんね…演奏の邪魔しちゃった?」

「いや…もう帰ろうと思っていたから、ちょうど良かった」



月森くんが弦を緩めながら話かけてくる

「……綺麗になったな」

「え?」

「綺麗になった…とても…」


真っすぐ見つめられて、琥珀色の瞳に映る私はすごく顔が赤い


「そんなことないよ…///それより月森くんこそ、かっこよくなった」

「そうだろうか?君に言われると嬉しいものだな…///」

こういうストレートな表現って月森くんらしい


「さっきの君の演奏、もう少し力を抜いた方が良い。日野らしさが出ない」



――え?



「送っていく。帰ろう。」

「どうして?」

「なにがだ?」

「どうして名前で呼ばないの?」


―なに…どうしちゃったの私?でも…でも…



「君とはもう…恋人同士じゃない…失礼かと思った」


「なんでよ!前みたいに香穂子って呼んでよ!
 月森くんはどうしていつも勝手に決めるの?
 なんで待ってろって言わなかったの?言ってくれたら…」


――私は…待ってた?


私は言葉に詰まる
無意識に涙が出てくる…あの時、高校生の時に言えなかった感情が今出てきて


「すまない…君を泣かせるつもりじゃなかった…俺が悪かった
 泣かないで…香穂子」

月森くんに優しく抱きしめられる

「君の香り…変わってないな…俺が好きだった香りだ…」

「月森くんの香りも変わってない…」



あんなに動揺していたのに月森くんの腕の中にいると、とても安心する

淡い思い出に少しだけ浸らせて…


今だけは










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<あとがき>
あ〜あ。とうとう昔の恋愛が燻りだしてきましたね(←実況?)
ですが、事実を知っているつっちー!!次回に続く!!



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