〜梁太郎side〜
香穂の様子がおかしい…
そう、あの月森との合奏の後からだ
何となく俺の腕の中にいても
どことなく上の空な気がする
「やめて」
「今日はそんな気分じゃない」
そんなことを言われたのは初めてだった
一体どうしたって言うんだ?
月森か…?
やっぱり月森と何かあったのか
彼氏としてだけじゃなく
音楽家としても嫉妬したくなるほど、ぴったりと合った演奏
やっぱり月森と何か…
いや、思い返してみても傍から見てもかわいそうなくらい
月森の香穂に対する指導はスパルタだった
「それくらい弾けないでどうする」だの
「これくらいでは音楽の世界では通用しない」だの
何もそこまで言わなくても良いじゃねぇかってほどだった
香穂と月森に何か関係があるとすれば因縁ぐらいだろう
きっと今回の若手コンクールに月森も参加するから怯えているのかもしれない
確かに月森は強敵だ
だからそんな気分じゃなかったのだろう
俺も練習にしっかり付き合ってやらないと
伴奏は俺が引き受けてやろう
そう誓った
〜香穂子side〜
練習にまったく集中できない…
どうしたんだろう私は…
月森くんは更に腕を磨いている
彼に恩返しする意味でも最高の演奏をしなくては
彼に良い演奏だったと言われなくては
そんな思考にハッとする
なぜ…梁じゃなくて
彼に…月森くんに褒められようとしているの?
梁だってヴァイオリニストとしての私を支えてくれたというのに
きっと同じ楽器だったからだよ…
そうだ私が抱いている感情はライバル心だ
だけどどうして
どうしてこんなに
彼…月森くんのことを考えると切なくなるんだろう?
「ここで練習してたのか?」
「梁…」
「どうした?うまくできないのか?」
「……うん」
「たまには息抜きもしろよ。お前ずっと練習してるだろ?」
どこか行くか?と遊園地とか提案してくれるけど、とてもそんな気分にはなれない
「妥協したくないの。出るからには優勝を目指したい。」
「なんだそれ?何か月森のマネみたいだな。」
梁は驚いて私を見ると笑っていた
良かった…梁は勘が良いから焦る
自分でも自分の言葉に驚いている…月森くんの影響だ…
何をしているのよ…私は
こんなに私思いの彼氏がいるのに
私は梁に抱きつく
「……練習より、早く二人きりになりたいの。」
「今でも二人きりだろ?」
そう言って私の頭を撫でてくれる
「違うの…そんなんじゃ足りないの…押しつぶされる…」
梁の「何に?」という言葉を遮って彼に口付けをする
言葉の意味を推し量ってくれたのか梁の手が私の服の中へと侵入してくる
このままじゃ
動揺で押しつぶされる
月森くんと再会したことの動揺に
*******************************************
<あとがき>
揺れるがいい!動揺するがいい!(←鬼)
しかーし、勘が良い土浦くんがこのままでいると思いますか…?
そしてドロドロ好きの魚月がこのままにするわけがない!
お察しの通りです。うふふvv