マイ・フェア・レディ
あいつに近づきすぎた…
我ながらそう思う
あいつはただの玩具にすぎないんだ
自分に言い聞かせる
だけど…あいつの傍にいると
なんだか俺が“俺”でいられるから心地良くて…
自分から距離を置いたはずなのに
会えないことが腹立たしい
「……香穂子」
俺は無意識にあいつの家へと来ていた
チャイムを鳴らしても出る気配がない
留守か…?
ドアに手をかけると不用心にも開いている
階段を上るとそこには
香穂子が床で寝ていた
窓が開け放たれ揺れるカーテンから
垣間見える彼女の肌がとても色っぽい
「ん…?梓馬?」
目をこすりながら香穂子が起き上がる
まどろんだ瞳が…俺を見つめ
俺の名前を呼ぶ唇が俺をそこへと誘い込んでいるようだ
何も言わずに俺は彼女に口づけた
今度は何度も何度も貪ぼるように
そして彼女の口の中に舌を侵入させる
香穂子が驚いたように目を見開いた
「お前は色気が足りないからな…
…そろそろこういうこともしないと…ね?」
やっと彼女の唇を解放した俺は
これは企画の一環だと
彼女にというより、自分に言い訳した
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