マイ・フェア・レディ
「梓馬…」
私の目の前に梓馬が知らない女の人と一緒にいる
「ごめん…やっぱりお前とは一緒にいられないよ…家が大事なんだ」
「嘘でしょ?梓馬!嘘って言って!」
「おい、おい香穂子?」
「はぁっ…夢…?」
「お前、すごいうなされてた。大丈夫か?」
私は梓馬に抱きつくと力を入れた
「梓馬…私の傍にいてね。ずっと…ずっと一緒じゃなきゃイヤ」
「なに?俺にお願いするの?それなら対価が必要だよ?」
梓馬が笑いながら私の髪を撫でる
「何でも梓馬の言う通りにする…だからずっと傍にいて」
あまりに必死な私の顔に梓馬が驚いたみたいだった
「言われなくてもずっと傍にいるよ。お前の傍は飽きないからね…」
優しく抱きしめ返してくれる梓馬の腕の中で私は眠りについた
学内コンクール…私はそんなものに抜擢されてしまったわけで…
私の技術はそこまでのレベルじゃないと思う
音楽科に入る時には必死に練習して、多分ギリギリで入学できたんだと思うんだよね
火原さんとか梓馬がいるから良いけど…
私は場違いではないかという思いに苛(さいな)まれていた
「いいか?今回の学内コンクールのテーマはこれだ」
金澤先生が説明してくれてる
確か梓馬の担任の先生だよね?
授業中の梓馬ってこんな感じなのかな?
そんなことを考えながら私は横に座っている彼を見た
いつもより真剣なその眼差しが新鮮で私は緩む頬を抑えられない
――やっぱり梓馬はかっこいい
梓馬を喩えるならやっぱり白百合とかかな…
でも女の人っぽくなるかな…
「おい、日野!」
「っ!はっはい!」
「お前さん、聞いてるのか?柚木を見ても内容わかんないだろ」
うっ…めちゃくちゃ恥ずかしい
「日野さん、僕がどうかした?先生の話はきちんと聞かないと…ね?」
梓馬が呆れた様な顔で私を見る
もちろん仮面は被っているけれど
「……すいません」
先生にというより梓馬に対して謝った
梓馬が私に執着するように私も彼を愛している
何もかもを教え込まれて梓馬がいない生活なんて考えられなくなってる
梓馬がいるから私が存在しているようなそんな錯覚さえしてしまうほど
私も梓馬に夢中だった
「香穂子…帰ったら大事な話がある」
帰り道で梓馬にそう言われた
「何?今聞くけど」
「帰ったら。お前のおじいさんにも聞いてもらいたいし」
「うん?」
なんだろ…なんかのお小言かなぁ…
家に着くと梓馬が改まった様子で私とおじいちゃんの前に座った
「柚木の家へ帰ろうと思います」
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<あとがき>
また一波乱ですね(笑)でもこっからですよ!こっから!←魚月的には
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