マイ・フェア・レディ
梓馬が家を出てから、登校するための準備を始めた
梓馬と同じ学校に来るんじゃなかったのかな
私が高校になってから私たちに関係はおかしくなりだした
梓馬が柚木家を出ることになったことだって…
こんなカラダだけの毎日が続くようになったのだって…
重い足取りで学校へと向かった
放課後、コンクール参加者の集まりがあった
「あっ香穂ちゃん!こっちだよ〜」
明るい火原さんの隣にいる梓馬の姿が目に入った
何だか怖くて私は月森くんの後ろに隠れた
「……どうした?」
月森くんが戸惑った顔をする
「火原、そんなに大きな声を出したら香穂子がびっくりするよ。
香穂子はそういう子だから…ね?」
梓馬が私の傍に来た
反射的に体がビクッとする
「香穂子…どうしたの?」
私に触れようとした手を月森くんが制止する
「早く…話し合いを…練習時間が減ります。」
「そうだね…合宿の日取りについて、異論がないか決めようか?」
おろおろと目を上げた時、梓馬は物腰柔らかに、微笑んでいた
「日野…?戻らないのか?」
気が付くと辺りには誰もいなかった
話し合いはとっくに終わっていたみたい
月森くんが私の前に立つ
「君は最近おかしい…いや…前から少し変わっていると思っていたが…
今は違う意味でおかしい。
君が奏でる音楽にそれが表れている…もっと集中した方が良い」
月森くんは目を伏せると言葉を続けた
「いや…俺が言うと、つい言葉がきつくなってしまう…
何と言うか…悩んでいるのだろうか…だから…つまり…その…
君が心配になる…」
月森くんの言葉にびっくりした
だってそんなこと気にしなそうな人だと思っていたから
心配してくれたことが嬉しくて
張りつめていた糸が切れたように私は月森くんに抱きつくと泣いてしまった
「っ…日野……」
最初は宙を浮いていた月森くんの腕も私の背中に回ってそっと抱きしめてくれた
この時はただ月森くんの優しさに甘えていたかった
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<あとがき>
月森くんと香穂ちゃんが…;魚月、これでも柚木ファンです!
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