マイ・フェア・レディ
香穂子が他の男といる…それだけでこんなにも不安になる
この俺が…あんなことまでして他の男へ牽制するだなんて…
バカらしい
どうしたっていうんだ俺は
理由は自分でもわかってる
俺の価値があるのかってことだ
柚木の家と決別した自分に
香穂子がそのために俺といるわけじゃないこともわかっている
あいつは何も知らずに俺と付き合っていた
そう…香穂子は柚木ではなく俺を想っていてくれている
頭ではわかってる…そのつもりなのに何だこの気持ちは…
不安で不安で仕方ない
「梓馬?」
声をする方を見ると香穂子が息を切らして立っていた
「どうした?もう少しで授業始まるだろ?」
「そうだけど…梓馬こそどうかしたの?何か違う…」
香穂子が俺の手を握った
「何か梓馬…寂しそう…」
ハッとした…こいつはいつも俺の心を見透かしてくる
香穂子の手首を力強く握った
「いった…」
「寂しそう?わかってるなら慰めろよ…
俺のこと愛してるんだろ?」
「ちょっと…痛いっ…梓馬?」
使われていない練習室に香穂子を押しこむと鍵をかけた
「おかしくなる…俺を何とかしろよ
そうさせるのはお前なんだから」
「何が?学校ではやめてって言ったでしょ?帰ってからにしようよ」
必死に抵抗する香穂子を抑えつけて俺は性急に求めていった
行為のあとちょうどチャイムがなって授業の終わりを告げる
乱れた香穂子の衣服を整えようと手を伸ばすと体が強張るのがわかった
「最近の梓馬…どうかしてる…どうしたの?」
何度抱いても女を宿さない瞳に見詰められた
「俺は何も変わってない…お前を愛してる…お前もだろ?」
「好きだよ?」
香穂子のその答えに俺は不満を持った
「愛してるかって聞いたんだよ」
後頭部を押さえて強引に口づけると急なためだったのか香穂子が苦しげに息継ぎをした
「……愛してる…梓馬のこと愛してるからっ」
そんな言葉を引き出しても俺の不安が消えることなんてなかった
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<あとがき>
魚月的に柚木さまに“おかしくなる”と言われたいっ!
ただ、魚月の場合…不安でおかしくなるのではなく、
バカすぎてお前といるとおかしくなると言われること間違いなし…;
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