マイ・フェア・レディ




「ただいま〜♪」

「お嬢さん、お帰りなさい」

私はお客様がいないのを見計らって
お店から家の中に入る

私は去年まで京都に住んでいた

両親が事故で他界し
兄姉は大学生なのでそのまま下宿

私だけ祖父のお店がある
この街に引っ越してきたのだ

祖父は着物デザイナーで
私も京都の工場にはよく出入りしていた

時々、私もいたずら書きみたいな
デッサンを持って行ったら
祖父にいたく気に入られた


店と扉を隔てて
住まいになっている

入るとすぐに和室になっていて
ここでいつもご飯を食べたりテレビを見たり
いわゆる、リビングだ

和室の右側には台所
その廊下から二階へ上がると
私専用のアトリエがある
そして、自室へとつながっている


和室から廊下を左に行って
二階へ上がると祖父のアトリエと自室だ


私のアトリエには外からも
入れるようになっていて
お客様がいらっしゃる時は大抵
そちらから入る

祖父が弟子が出来た時にと
このような独立した造りの家にしたらしい

弟子として、扱われていることは
嬉しいけれど何だか独立した造りは
一人暮らしをしているようで寂しいから
こんな風に時々お店から入るのだけれど…


祖父は京都に行くことが多い

昔からの番頭のトメさんが
夕食までいてくれるし
すぐ隣に住んでるから良いけれど



ふぅ…今日は色々あったなぁ…

なんとなく綺麗な音色に魅かれて
あんな所に行っちゃったけれど

とんでもない出会いがあったもんだ

それにしても…とても綺麗な男の子だった

どこかの王子様っていってもいいぐらい…

顔が整いすぎてるし、生れながらの気品??
みたいのがあるし



少し錆びれた庭でフルートを吹いていて
なんか画になるっていうか…

そう!こうイメージが湧いてくる


私は早速、紙に向かって次々と描いてみる


でも…なんか寂しそうな人だった


気がする


すごい俺様!って感じだったけど…
玩具とか言われたし…

しかも名前すら教えてもらえないし
その価値すらないんすか…?

まぁいっか、アイデアも浮かぶし
作法とかも教えてもらえるし
一石二鳥だ♪

『俺様なトコは少し我慢しよう…』


私は自分にそう言い聞かせた


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