マイ・フェア・レディ
彼女は大きな瞳をパタパタさせている
まぁ、無理もないだろう
俺の中で浮かんだ考えはこうだ
突然、お嬢様学校に入ることになった
この粗野な少女を立派な淑女へと育てる
そう、まるで源氏が若紫を育てたように
どんな男も夢中になるような魅力的な女に仕上げよう
俺はその様子を観察して愉しむ…
まぁ高みの見物といこうじゃないか
自分の人生は祖母と家によって決められている
俺も誰かの人生を操ってみたい
「……面白そうだ」
早速、自分の中で企画を立ち上げると
俺は目の前の玩具を改めて見た
『若紫は素材が良かったが…』
大きな栗色の瞳
桜色の唇
肩にかかるほどの長さの朱色の髪
すらりとのびた脚
まぁ…悪いわけではないか…
「おい!さっさと来い!」
俺は彼女を離れの茶室へと連れて行った
まずは、この粗野な印象を何とかしなくては
俺は立ち居振る舞いから矯正することにした
「襖を開けてみろ」
「ん?はい。」
バシャッ
「違う!一度、座ってから!」
「はい!」
かれこれそんなことを続けて小一時間
俺の剣幕に押されてか、会った時よりも
少しマシになった気がする…
「ふぅ…やっぱり大変なんだね。
あ、自己紹介まだだったよね?
私は日野香穂子。中1です。
あなたは?」
「……お前に名乗ってやる義理はない。」
「名前ぐらい良いじゃん。ケチ!」
拗ねたように頬を膨らませる仕草が何とも愛らしい
なんてな
「今日はここまでだ…
明日はテーブルマナーをやるぞ
17時にあの庭園に来い!」
「はーい」
そう言って彼女に裏戸を案内した
「今日はありがとう。
えと、明日も宜しくね
んーー…先生?」
これから、玩具を育てる
完璧な淑女に仕上げてみせる
あの調子じゃかなり大変そうだが
あいつに“俺”をぶつけただけで今日は
かなりスッキリしたし…
玩具が出来ただけで俺は大満足だった
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