マイ・フェア・レディ
私は今朝も早く起きてヴァイオリンの練習をする
だって悔しいじゃない!
月森蓮もそうだけど、私の第一の理解者だと思ってた
梓馬のあの言葉を聞いたらとっても腹が立ったんだから!
『まぁその通りだな』
その通りだなって!梓馬は私の努力を知っているはずでしょう!?
なんでそんな他人みたいなこと言うのよ!
「お前…なにそんなにヤケになって練習してるんだよ?」
寝起きの梓馬が髪を少し乱れさせながら戸を背にして立っていた
「別に…ヤケになんかなってないもん」
「ふーん?別にいいけど」
その“ふーん”は何なのよ!?
なんか私のことを見透かしてるみたいな梓馬のセリフが癪にさわる
「それにしても、香穂子は本当に素直じゃないね…
夜はあんなに素直なのにな?」
「っ!///うるさい!」
真っ赤になる私を見てクスクス笑うのも止めて欲しい
いつまでも玩具から抜け出してない気がするのは私だけ??
梓馬に“上手くなったね”って言われたい
褒めてもらって、頭を撫でてもらいたい
そして“さすが俺の女だよ”って俺様なセリフを言ってもらいたいんだvv
「お前…なに道の真ん中で一人で二ヤけてるんだよ…?
仮にも俺の女だろ?そんな気持ち悪いことするな」
「!?(ムカっ)」
“仮にも”ってなによ!
梓馬と一緒の登校中
さっきまでの梓馬の彼女としてという私のカワイイ想像も見事に打ち砕いてくれた
それから梓馬と一言もしゃべらず、私は教室に行く
今日は絶対に梓馬と話さない!
夜だって一緒に寝ないからね!
月森の言葉がそんなに引っかかるのか?
他の男の言葉で練習に夢中になるお前に腹が立って仕方ない
俺は独占欲が強いんだよ
俺以外の男を見るな
お前は俺のことだけ考えていれば良いんだ
そんな思いで教室に入ると俺の心情とは真逆の火原が現れた
「柚木〜〜〜っ!どうしよう!
オレ、コンクール参加者に選ばれちゃったよ!?
ちなみに柚木もだよ!
何すれば良いんだろ!わ〜〜〜〜」
「おはよう、火原、落ち付いて?
後で掲示板をちゃんと見に行こうね」
コンクールか…くだらないね…
「そうだ、あとね…」
火原がそう口を開きかけた時、激しい音を立てて教室の戸が開いた
「梓馬!どうしたら良いの!?
私、コンクール参加者に選ばれちゃったんだけど!」
パニック状態の香穂子が俺にしがみつく
「どうしよう!?コンクールなんてわかんないよ。」
「とにかく、落ち付いて……」
こいつは今、自分がどんな状況に置かれてるのかわかってない
コンクールよりも、親衛隊が睨みをきかしてるのが見えないのか…
「日野さん、あなた、先輩である柚木さまを呼び捨てにするなんて
どういうおつもりなのかしら?」
青筋を立てた親衛隊が香穂子の前に現れる
「えっ…その…あの…」
ようやく自分の失態に気づいた香穂子がしどろもどろになりだした
仕方ない…
「彼女は僕の恋人なんだ…別に隠すつもりはなかったんだけど…
幼い時からの付き合いだしね…」
「ゆっ…ゆっ…柚木さまの!?いや〜〜〜っ!」
周囲が絶望的な悲鳴に包まれる
香穂子は俺の行動の意味がわからないらしい
ただ、俺は宣言してやっただけだ
お前には俺という男がいるということを
誰にも触れさせないということを
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<あとがき>
とうとう恋人宣言しました〜♪
まぁそれだけ、梓馬くんに余裕がないってことですな…;
だけど、そんな梓馬くんも素敵ぃvv
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