マイ・フェア・レディ












バタン!

ドンドンドンドン



――うるさい…


まったく…本もまともに読めないじゃないか…


バンっ

ドアが開くと共に香穂子が怒鳴りだした



「なんなのよ!あの男っ!!!」


俺は香穂子を無視して再び本に目を移す


「梓馬、月森蓮って何者なわけ?」

今でも俺に掴みかかりそうな勢いで香穂子が捲くし立てる

「月森?音楽科の王子とか言われて俺と人気を二分してる
 サラブレットってトコかな」

「馬??も〜なんだか知らないけど、ムカつく!!
 私の演奏を『荒削りも良い所だな…聴くに耐えない、もっと精進すべきだ』
 なんて言ったのよ!!」

俺は香穂子を一瞥するとこう続けた

「へぇ…まぁその通りだな。それよりお前、うるさい。
 ただでさえ、学校でいい子を演じてるんだ。
   お前と居る時ぐらい、愚痴とか聞きたくないんだよ」


いい子なんてもう演じなくて良いはずだ

俺の中でそんな声が聞こえてくる

香穂子の話を無視して再び本に目を移した俺に
クッションが飛んできた


「なによなによなによ〜っ!梓馬までそんなこと言って
 バカ!知らないっ!」


バタン

ドアが閉まると隣の部屋へと籠りだした


まぁ…確かにあいつの演奏は荒削りだけど……

俺の女にそんなこと言うのは…許せないね

言って良いのは俺だけだ





翌日、俺は月森がいるだろう練習室へと向かう


「月森くん練習?本当に努力家だね……感心するよ」


「いえ…練習は当然のことですから…」

月森は相変わらず淡々とした口調で話す


「そう…日野さんが迷惑をかけているみたいでごめんね
 君にとっては耳障りな音だろうね…まだ始めて3年だから」


「始めて3年……?」


月森は驚きを隠せないといった感じだ


「彼女は芸術面に関しては才能があるから……
 君ほどではないけど…あんまりいじめないであげて…ね?」

とどめに笑顔の仮面を見せて

俺は月森に背を向けると元来た道へと歩きだす



どんな形であれ…あいつの心に常にいる存在は俺で十分だ


いつでもあいつの頭の中は俺だけいれば良い


俺のことだけ考えて…俺に愛されることだけ考えていろ











************************************
<あとがき>
何だかんだ言っても結局、香穂ちゃんにあま〜い柚木さまでした☆
そして俺様でした☆たまんないっすね!(←バカ)





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