マイ・フェア・レディ











目を開けると白い天井が広がっていた


すぐ傍の出窓から陽の光が射しこむ


隣に柔らかい肌の感触を確かめるとそこには愛しい俺の彼女がいた


「そうか…俺は香穂子の家に転がりこんだんだった…」


俺の胸に寄り添って無防備に眠る姿…

愛らしくて香穂子を抱きしめる



「お前だけは…失いたくないから…」



こんなに何かに固執してしまうなんて

何もかも諦めてたはずだったのに…

人生なんて…レールの上に引かれていた方がラクだと思ってたのに…

反抗なんてガキのすることだ

諦めること

それは受け入れること、我慢すること


俺はずっとそう思っていた




だけど、たとえガキだと言われようが、
感情に流されていると言われようが、
お前だけは…お前だけは譲れない


誰にも…誰にも譲りたくない…





「ん……梓馬?」


まどろんだ瞳をしながら香穂子が目を覚ました


「間抜けな顔だな」

「朝からそういうこと言う?」

「俺は事実を言っただけだけど?」


プイッとそっぽを向きながら香穂子が着替え始める


「そんなに怒るなよ…かわいい顔が台無しだよ?」

「もう!どっちなのよ!!」

「どっちも…かな。だってお前は俺のかわいい…」

「玩具なんでしょ?」

さらに機嫌を悪くしながら下に降りて行こうとする


「好きだよ…」


香穂子の手を思わず掴んだ


「好きだよ…香穂子…」


こうした穏やかな時間がなんだか恐くて…

あいつへの想いを繰り返し口にする


「そんなの…私だって一緒だよ…///」


香穂子が少し狼狽しながらも、俺の気持ちに応えた



こんなに穏やかな日常なのに


俺は焦燥感でいっぱいだった






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<あとがき>
柚木さまの中で揺れ動くもの…それがどんどん大きくなっていきます☆





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