マイ・フェア・レディ











「梓馬くん、今日はありがとう」


ロビーにいたままの俺に話しかけてきたのは
香穂子の祖父である松平天龍だった


「こちらこそ…こんな会食にお招きいただいて光栄でした」


「はは。まぁ堅苦しい挨拶は抜きにしよう
 友人たちもいたく君を気に入っていたよ
 君には、実業家としての才能のあるとか興奮している奴もいたなぁ」

なんて言いながら豪快に笑っていた


「だが、君はまだまだ子どもだ」

「はい……?」

俺は言葉の真意を量りかねて語尾を上げる


「子どもは自分に正直になりなさい。
 そして、もっと甘えなさい。
 君ならいつでも家に来ても構わない。
 わかるかい?孫が欲しいならそれで構わない。
 君が望んでくれるなら私は大歓迎なんだよ?」


「お義祖父さん……」


「君が無理をしている理由も今日で何となくわかった。
 だが、私は君を気に入っている。家を出たいなら
 いつでも私の家に来なさい
 迎えの車が来たようだね…行こうか?」

優しく微笑んで肩にポンと手を置かれた


その時見た松平天龍の顔はとても優しくて
不覚にも俺は泣きそうになってしまった







「どういうことか説明していただきましょうか?」

家に着くなり、祖母の部屋へと強制的に連れて行かれた

「彼女とお付き合いしています。」

俺は観念したように口を開いた


「わかって言っているのですか?
 何度も言いますが、あなたには縁談のお話もあるのですよ?」

こっちだってその話題にはつくづく飽きた

「お断りします」

キッパリと俺は言い放った

祖母の眉間の皺が一層深くなる


「許しません。あなたは柚木家の人間なのですよ?」

「ええ。ですから、それもお断りします」

祖母が怪訝な顔をする



「僕はこの家を出て行きます」


その場にいた誰もを凍りつかせる言葉だった








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<あとがき>
うおーーーーーーっ!!!
どう?どうですか????もうここからが大変なのですよ〜





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