マイ・フェア・レディ
「学内コンクール?」
ベッドで裸のままの梓馬が私に腕枕をしてくれる
「そう、星奏学院には一年ごとに学内コンクールがあるんだよ
それに当然だけど俺も選ばれたってわけ」
「ふーん。じゃ優勝あるのみだね♪」
あ…聞かなくてもわかるこの顔は…
「バカか?優勝なんてするわけないだろ。俺は2位か3位ぐらいに調整する」
「せっかく選ばれたのに…もったいなーい」
「将来のためだよ。“学内コンクールで優勝しました”より
2位でしたぐらいの方が嫌味がないだろ?
取引先の坊ちゃんとかが負い目を感じないぐらいで、
尚且つ優秀だってことを示さなきゃいけないんだよ」
「なんかバカらしい…」
「まぁな。だけど、これも一つの政みたいなものだな…。」
私は梓馬の髪を撫でる
「本当は本気出したいくせに」
フッとほほ笑むと私に口づけてくる
「わかってるだろ…?俺は“柚木梓馬”なんだよ」
その瞳はどこか寂しそうで…私は梓馬を力いっぱい抱きしめた
「香穂子?」
「私は梓馬が好きだよ…“柚木梓馬”じゃなくて」
梓馬が私をしっかりとみつめさせる
「わかってるよ…お前にまで良い子は演じてない。
お前の前ではいつも俺は俺だよ。」
梓馬の素肌の感触…私の前だけでは心に何も纏わないで欲しい
「私も来週コンクールがあるんだ…」
「コンクール?何の?」
「まぁコンクールっていうか展示会。今年は私の作品も出してもらえるらしいから」
「へぇ…すごいじゃないか」
梓馬の着替えを手伝いながら、今度の展示会のことを説明する
あ、そういえば
「梓馬、おじいちゃんが好きなの選びなさいって」
私はおじいちゃんがデザインした着物を手渡す
「ここにいる時にくつろげるようにだって。
あとこれ。早くひ孫が欲しいとか言ってたけど…」
おじいちゃんから渡されてたドリンクみたいのを渡す
梓馬は苦笑すると
「お前のお祖父さん変わってるな。じゃあ頑張らないとね?」
ってなにを?
考える間もなく
そのまま、また押し倒されるのでした
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今日は本当に最悪な日だ…
祖母に連れられてご挨拶回り
面倒ったらないね…
しかも今日は兄たちも一緒…家族総出なんだから…
早く解放されて香穂子に会いたい
あいつも展示会って言ってたから遅いかもしれないけど
「は〜久々に戻ってきたと思ったら女王様のお伴かよ。」
これは次兄の拓馬。
女性問題を祖母に知られイギリスに留学させられていた。
「こら、お祖母さまのことをそんな風に言うもんじゃない。
それに向こうでも好きにやってたんだろう?」
そう諭すのは長兄の一馬。
こいつが次期柚木の家を継ぐことになってる。
「そういえば梓馬、お祖母さまがお前に西園寺家との縁談を考えているらしい。
あそこは名家だし、政界にも影響力があるというのに…何故お前になんだろうな?」
俺の方を向いた長兄の一馬がそう口を開く
――そんなこと知るか
「さぁ?僕にはまだ縁談は早いと思うのですが…」
――お前の、ひがみ癖ならもう直らないぐらい遅いけどな
「へぇ〜お前に縁談なんてな。まだ女知らないんじゃないのか?
何なら俺が何人か譲ってやっても良いんだぜ?」
――お前の趣味の悪い女なんかと寝られるか
「拓馬兄さんは相変わらず冗談が過ぎるね…僕は兄さんほど女性にうまく立ち回れないよ」
――俺は今、若紫で手一杯だし、その他の蛾はいらないんだよ
俺は心中とは裏腹な穏やかなやり取りをする
雅が別の車で良かった…怒りに震えて香穂子のことを口走られたら面倒だ
もちろん、香穂子に縁談のことを知られるのも
ぼんやりと車窓から外を見る
リムジンに乗っている俺たちは他人から見ればそんなに羨ましく映るのか
だけどそれは、檻に閉じ込められて見世物になっているような感覚がした
俺からすれば羨ましいのは他人の方だ…
俺が自由になれるのは…あいつの傍しかない…
車が停まり、会場に着いたことを知らせる
「お祖母さま、今日はご挨拶回りではなかったのですか?」
「ご挨拶回りですよ。
この展示会にはたくさんのお世話になっている方がいらっしゃるのですから
くれぐれも失礼のないように」
「はい…」
ここは松平天龍の展示会ということは香穂子もここにいるわけだ
自然と俺の頬が緩んだ
「も〜う展示会なのになんで私がお酌したりしなきゃなんないのよ〜」
ホントついてない
おじいちゃんの昔からのお友達なら私も知ってるけど
最近増殖してきた人は全然知らないから、愛想笑いも疲れる
あと当たり障りのない会話が全然できないんだけど
梓馬はいつもこんなことしてるんだよね…
そう思うと、つくづく梓馬ってすごいなぁ
「うわっ」
突然手が伸びてきて私は部屋へと引きずり込まれた
「!!!何するのよ!離して!!」
「俺だよ」
「梓馬???なんで?」
「まぁ家の都合でね」
香穂子は府に落ちないといった顔で俺を見ている
「こんな所で会えるなんて運命かもな?」
「そう?」
「お前はつくづくそういうことは疎いなぁ…まぁ良いけど
それにしても…ふ〜ん」
「なによっ!」
「普段のお前と違って色っぽい」
今日は自分の作品も紹介しなくてはいけないからか香穂子は着物姿だった
白地に青が散りばめられ金箔の蝶が舞っている
普段はあまり見ることのないうなじに口づけた
「ちょ…ちょっと梓馬…」
「香穂子…」
着物の合わせから手を侵入させて柔らかな膨らみに触れる
「だ…だめだってば…我慢してよ…」
「無理」
「だめ…もう…行かなきゃ…」
「俺のこと好きじゃないの?」
有無を言わさず俺は帯をほどきにかかる
「好きだけど!違うでしょ!」
「なら…もう少し…」
「何をしてるのですか!」
他を寄せ付けない聞きなれたことのある声が俺たちに向けられる
「お…お祖母さま…」
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<あとがき>
きたーーーーーーーーーーーっ!
て、ここから先が難しかったりする魚月…が…頑張ります!!!
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