マイ・フェア・レディ








「待ちに待った一緒の登校日だね♪」

「通学路だ。少し離れろ」

「なんで?いつもなら梓馬から寄ってくるくせに」

「梓馬じゃなくて先輩」

「……先輩。」

「それから付き合ってることは言うな
 良いな?」

「…………」

「返事」

「……はい」



今日はいよいよ高校の入学式

それにしても校長先生の話長いな〜
朝の車の中でのやり取りを思い出す

あんなこと言ってたけど、一体なんで?



「やっと終わった〜」出入り口には上級生が列を作って部の勧誘とかしてる

あ、梓馬もいる


私は梓馬の傍に駆け寄った

「梓馬なにしてるの?」


あれ…今なにか周囲から殺気を感じたんだけど…



「どうしたの?具合が悪いのかな?僕が案内するよ。保健室はこっちだよ」




梓馬にズルズルと引かれて屋上に行く


「おい!先輩って呼べって言っただろ!」

「なんでよ!今更先輩なんて呼べないんだけど!梓馬は梓馬でしょ!」

「俺の言う通りにしてれば良いんだよ!慣れ慣れしくするな。良いな?」


また俺様目線で命令される

ふんっ!何よ何よなによ〜っ!!

めちゃめちゃムカつく!


「せっかく同じ高校に来たのに全然嬉しくないんだ?
 梓馬が喜ぶと思ったのに!」


梓馬が冷たい目をする

「なに?お前は俺のためにここに来たの?自主性がない女は嫌いだよ。
 それに俺は頼んでないだろう?」


――なにその言い方!


「そうだけど…!梓馬、最初はあんなに喜んでくれたじゃない!」

「はぁ……。
 香穂子が来てくれて嬉しいよ。僕のためにしてくれたんだね。
 こう言えば満足か?」


王子様スマイルでほほ笑んだあと、ダルそうに髪をかきあげる

「とにかく、学校では俺とお前は他人だ。良いな。」

それだけ言い残して梓馬は去って行った



なに、あの態度!確かに音楽科に来たのは音楽を勉強したかったのもあるよ?
だけどここにしたのは梓馬がいたからなのに!

こんなことならあのまま聖蘭にいれば良かった。
音楽科はないけど、雅ちゃんと一緒だったのに!



他人って言うなら良いわよ!こっちだってそうしてやる!!








「香穂子、俺」

「どちらの俺ですか?」

「………いい加減開けろよ」

かれこれ何回このやり取りをしてるんだろう…
香穂子は自分の家の鍵を換えたみたいだ

「他人には開けません」

「あれは学校での話だろ?」

「どうだか」

「あのねぇ…そういうかわいくないことしてると、帰るよ?」

「帰れば?」

インターホンが不通になる


いつからあんなにかわいくなくなったんだ全く!

俺の言うことを素直に聞いてたあいつはどこいった


仕方なく俺は家へと帰った


俺の親衛隊がいるから俺たちのことを言うなと言ったのに

俺の配慮もわかんないのかあいつには

あいつは俺の言う通りにしてれば良いんだよ


香穂子が星奏に来て嬉しかった…そう嬉しくないわけじゃない
ただ押しつけがましく言われたのに腹が立った

だから叱った

俺の女として俺のことをわからせるために


あいつはもう無邪気な少女じゃない

俺の女だ…今までのような態度は望めないのかもしれない

嫉妬もするし独占欲も出てくるだろう

だからこそ今、俺の女として教育しなければ…






「柚木、香穂ちゃんが入学してきたってホント?」

「あぁ…本当だよ。それで、頼みがあるんだけど、僕と香穂子のことは秘密にして欲しいんだ。
 ほら、親衛隊のこととかあるし…」

「そうだね!柚木教は怖いからね!
 それにやっぱり本人だったんだね。うん、見間違いじゃなかった。」


火原は、「そうそうここからが重要」と話を進めた


「だけどさ〜香穂ちゃんすごいよね。ファンクラブ出来たみたいだよ」

「は?」

火原の言葉に俺は耳を疑った

「星奏のプリンセス?だったかな?すっごいよ〜三年生を中心として広まってるみたい」


「さすが柚木の彼女だね」と注意したにも関わらず口走っている火原

いや…それどころじゃない


俺は火原と香穂子の教室へと向かった


火原が言っていたように香穂子の周りには三年生が集まっていた


「日野ちゃん、これ俺が昔使ってたノート。よくテストに出るとことかのってるから」

「ありがとうございます」


香穂子がにっこりと受け取る




「香穂ちゃーん」


ブンブン手を振りながら火原が香穂子に呼びかける


「火原さん♪」


火原を見た香穂子がこっちに寄ってくる

「わざわざ来てくれたんですか?」

「うん。新入生ってなにかと緊張するしね。俺達で良かったら何でも聞いてよ!
 ま…俺が答えられるかわかんないんだけどさ」

えへっと笑う無邪気な笑顔の火原。

「そんなことないです。火原さんは優しいんですね。誰かさんと違って。」

香穂子が俺を一瞥する


「僕も日野さんがわからない所あったら教えてあげるよ?先輩としてね。」

俺もあくまで外向きの笑顔でこのバカに接する


「結構です!あず…じゃなくて柚木先輩はお忙しいでしょうから」


そう言って火原の腕に手を回す

「私は、火原さんに教えてもらうから良いです!」

「そう?僕じゃ不満だったみたいだね。ごめんね。」

ったくあいつは!
俺にそんなこと言ってタダで済むわけないだろう



「ちょっと、あなた柚木さまに向かって何て口の聞き方なの!」

ほらな。


「別に…私は…」

俺の親衛隊数名にすごまれて、香穂子は火原の後ろに隠れ出した


お前は今まで女子校だったからわからなかったろう?
男が居ることでの女同士の醜い争いを

火原がこの事態を収拾できるとは思わない
俺も助けてやらないぜ?

良い機会だ
俺の言うことを聞かないとどうなるか、じっくり学ぶんだな



「日野ちゃんが怖がってるじゃないか!」

突然、3年の生徒会長である山城先輩が立ちふさがる

「上級生数名で下級生を囲むな!」

「日野ちゃんがかわいいからっていじめるなよ」

他の3年生たちも加わってきて…


俺の親衛隊はスゴスゴと引き下がって行った


「助けてくださってありがとうございます」

香穂子は山城先輩の両手を握って感謝する

バカ

あいつは無自覚なだけに本当にバカ


案の定、山城先輩を陥落させてる



それにしても面白くない

香穂子が痛い目をみるはずだったのに
そして俺に助けを求めてくると思ったのに




正門に止まっている俺の家の車の前で香穂子が待っていた

「柚木先輩、帰りご一緒しても宜しいですか?」

「どうしたの…?僕のこと迷惑かと思ってたのに」

「迷惑だなんてとんでもない。私は先輩がお忙しいと思っただけです。
 それとも私が一緒だと御迷惑でしょうか?」

「そんなことないよ。じゃあ乗って」


俺は車に乗り込むと憮然とした態度で接した


「他人とは話さないんじゃなかったのか?」

「話さないとは言ってないよ。梓馬の言ったことわかったから。」

「なにが?」

「私に学校で他人として過ごせって言ったこと。
 心配してくれたんでしょ?あのおねーさま方のこととかで」

「別に」

「素直じゃないんだから。」

「それはお前だろ?最初から俺の言うこと聞いてれば良かったんだよ」

「……ごめんね」


あまりの素直な態度に俺は香穂子の方を向いた




「ごめんね、梓馬」

俺の制服の裾を掴んで上目づかいで許しを乞う態度


……よくわかってる


「許してやらない…」

「えー」


俺は香穂子の耳元でこう囁いた



「夜はおしおきだ…覚悟しておけよ」








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<あとがき>
さぁ柚木ファンのみなさん、ご一緒にどうぞ!
       「覚悟どころか大歓迎!!」(笑)
学校シーンとかも入れつつ今後展開していきま〜す♪




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