マイ・フェア・レディ
「っぁ…だめ…だめだってば…」
「……」
「っ…梓馬…聞いてる?」
結局、今日も香穂子の意向は無視で
最後まで押し切った
香穂子の身体を知ってから
その温もりを毎日のように味わっている気がする
寝静まった頃にそっと家を抜け出して
香穂子の部屋へとくる朝早くに家へと戻る
まるで夜這いだな…と思う
今日はさすがに家できちんと寝よう
そう思って服を着ていると
「梓馬、夕飯食べていけば?
おじいちゃんがもらった牡蠣がいっぱいあって
今夜はぜったいごちそうだよ♪」
別に俺にとってはそんなに珍しくもないけど…
香穂子が言うとなんだかひどく特別なものに思える
それに…
「なぁ、お前のお祖父さんってどんな方なんだよ?
前に着物デザイナーって聞いたけど、日野なんていなかったからさ…」
有名じゃないだけなのかもしれないが
「あぁ、おじいちゃんは日野じゃないよ〜
松平だよ。松平天龍って知ってる?」
知らないよね?と香穂子は笑っている
俺は華道の宗家の息子だ
知らないわけがないだろうという
怒りにも似た感情が出てきた
まさか…香穂子があの松平天龍の孫娘だったとは…
俺はその場に座り込んだ
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもない!」
こいつには驚かされてばっかりだ
松平天龍は厳格で気に入らない仕事は
どんなに金を積まれてもしない職人気質だときく
そんな昔堅気の所を、政財界大物や著名人を初め
いわゆる裏の人間たちも好んで贔屓筋にしているとか…
だからこそ、そんな孫娘に関わるなんて
表向き、クリーンなイメージを大事にする柚木家からすれば…
だが、香穂子とのことをこのままにしておくわけにもいかない
香穂子のことだ…いつ俺のことを話してしまうかわからない
それを知った松平天龍ならともかく、
裏の人間が家に乗り込んでくるなんてことになったら…
俺は思わず頭を抱えた
「どうしたの梓馬?」
香穂子が心配そうに覗き込む
「お前は…俺のこと言ったのか?」
「え?なにを?」
「だから…お祖父さんに俺のこと言ったのか?」
「うん、好きな人はいるって言ったよ
そしたら、紹介しろって言ってた」
「そうか…」
ここは腹をくくるしかない
伊達に“優等生”の仮面を被ってるワケじゃない
もう気に入られるしか俺に道はないだろう…
「……食べてく」
「え?」
「夕飯。そしてお祖父さまにもご挨拶しないとな。」
「わかった♪じゃあおじいちゃんに言ってくるね」
香穂子は笑顔で下に降りて行った
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<あとがき>
第一の関門?とも言える場面です。
柚木さまファンの方からweb拍手で「柚香好きです」「マイフェアレディ面白い」
と感想を頂いて、本当にうれしいですvv
そしてアンケートでも人気だなんて感謝感謝です!
次回のweb拍手作品、柚木さまモノにしよっかな〜と褒められるとすぐ調子に
乗ってしまう魚月は思っております(笑)
これからも、うちの柚木さま×香穂ちゃんを宜しくお願いします♪
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