マイ・フェア・レディ
しばらく会えない
電話口で香穂子はそう言った
制作が忙しいのと店番の代りをすることになったらしい
あいつと会えないだけで何でこんなに日常がつまらなくなるんだろう…
時々は電話で話すけれど
何だかそれだけじゃひどく淡白で
早くあいつのぬくもりを…香りを…この胸に抱きたかった
かれこれ一か月になるじゃないか…
あいつは俺がいなくても平気なのか?
新しい男でもできたのか?
イライラする
だけど、あいつに余裕がない姿なんて見せたくないし
自分から会いに行くなんて意地でもしてやらない
そう思った12月のことだった
星奏の校門前でキョロキョロしている香穂子がいた
「誰を探しているのかな?」
「わっ…え?梓馬?」
「なんだよ…もう忘れたのかよ
バカとは思ってたけどそこまでとはな…」
俺の不快指数はマックスになった
「だって…背が…」
「あぁ…10cmぐらいは伸びたかもな
で?なに?」
俺は努めて素気なく言った
「あ、そうだった。じゃーん見て♪」
「おまえ…」
俺は思わず目を見張った
香穂子が見せたのは
星奏学院の音楽科推薦入試の合格証書だった
「今まで頑張って受験勉強してたんだ
秘密にしててごめんね?
梓馬を驚かせたくて♪ねぇ、驚いた?」
香穂子が悪戯っぽく俺の顔を覗き込む
俺の中の不快指数が急激に減るのもそうだが
その顔は…
まずい…
「とにかく、お前の家に行くぞ。車に乗れ」
「えっ?えっ?感想は?」
香穂子の意見を無視して車へと押し込んだ
いつもの落ち着いた香穂子の部屋に着くと
俺はマジマジと合格証書を見た
つまり、こいつと春からは同じ高校にいられることになったわけだ
淡泊だった日常が更に色づく予感がした
「なに?」
さっきからチラチラと香穂子の視線を感じる
「別に…///」
頬が紅潮しているように感じる
「なに?見惚れてたの?」
「なんでわかったの!?ってあっ///」
慌てて口を押さえている
「本当に可愛いね、お前」
久々の香穂子のぬくもりを味わうように優しく口付けした
「だって、梓馬、なんだか変わったんだもん
この間までは美少女だったのに顔が色っぽくなって
今は美男子って感じだし
身長だって私とそんなに変わらなかったのに…」
「この間まで美少女ってなんだよ…?」
だけど…
「ふーん…俺のこと意識しちゃって仕方ないんだ?」
俺は香穂子に詰め寄る
「意識?」
「男として意識しちゃってしょうがないんだろ?」
「男として?」
啄むように何度も口づける
制服のボタンを外し脱がせると
白のレースに包まれた俺の手に余るほどの豊かな胸が現れる
揉みしだくと俺が成長したせいか
昔より扱いやすくなった
そうだな…香穂子の言うとおり
美男子になったのかもしれない
レースの中に手を侵入させて
直に触る
滑らかな肌とその弾力に
思考がおかしくなるのを感じる
「あっ…梓馬…なにするの?」
香穂子は俺の行動に終始戸惑いっぱなしだ
俺は自分の服を脱ぎ捨てると
こう宣言した
「お前に男を教えてやる」
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