[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
マイ・フェア・レディ
「今日はあまり家に人がいないのよ
だから香穂子ちゃん!ゼヒ遊びにいらして」
という雅ちゃんのお言葉に甘えて…今、ここにいるわけで…
それにしても…すごい家
広すぎて緊張するし迷子になりそう
そういえば梓馬の家もここら辺だった気が…
「雅ちゃん、こちらの向かいはどなたの家なの?」
「向かい?向かいにお家なんてあったかしら…?でも、どうして?」
「ううん、ただ何となく」
向かいじゃないのかな??
ま、梓馬に直接聞けば良いよね
自己完結気味に思考を終わらせると雅ちゃんとの話に没頭した
「何だか賑やかだね…」
俺はにこやかに使用人に話しかける
「雅さまのお友達がいらっしゃっているのですよ」
今日はお祖母さまもいないし連れてきたのだろう
それにしても珍しいな
雅はあの学校を嫌っていた感があったのに
「お茶なら僕が持っていくよ…兄としてご挨拶も兼ねて」
「かしこまりました」
俺は使用人からお茶を受け取ると雅の自室へと足を運んだ
「雅、入るよ?」
「お兄さま、まぁお兄さまが運んでくださったの!?」
ご紹介するわ。こちら私の親友の…」
俺は雅の“親友”を見て思わず絶句した
「あっ!梓馬!?」
「え?香穂子ちゃん、ご存じなの?」
雅は俺と香穂子を交互に眺めた
「それで?お兄さまが香穂子ちゃんに
ヴァイオリンを教えることになったのね?」
かれこれ妹の追及を受けて数十分
仕方がないので雅には
俺のフルートを偶然聴いて感動した香穂子が
同じ演奏家として音楽を教えてほしいという縁で知り合った…ということにした
まぁ教えるという点では間違ってはいないが
口が裂けても妹に『こいつは俺の玩具なんだ』とは言えない
香穂子は事の次第を俺に任せるという風だ
さすがは俺の玩具…従順だな
というよりも…
俺が運んできたお菓子に夢中になってるのか!?
まったく呑気なやつだ…あとでデコピンと心の中で決めた
「まぁ…そうでしたの…それにしてもすごい偶然ですわね
私はお二人が顔見知りなのは嬉しいことですわ」
「僕も、雅が香穂子さんと知り合いなのは嬉しいよ
聖蘭女学院だから、もしやとは思ったのだけれど」
いや…まさか妹がこんな粗野だった女と友達だとは想像もつかなかった
「そうだわ、せっかくですからお二人で合奏をなさって?」
「そうだね…
だけれど、香穂子さんはまだ始めたばかりだから
もう少し後のお楽しみにしないか?雅?」
「まぁ…それも良いですわね
では楽しみにしておりますわ」
「それじゃあ…僕はこれで」
俺は香穂子に寸分も入る隙を与えず、その場を凌いだ
梓馬と雅ちゃんが兄妹…でも納得かも
そういえば面ざしもどことなく似てるし(今更だけど)
それに梓馬がすごいリッチなのも納得!
それにしても
梓馬は別人のような対応だったなぁ…
僕?
あの笑顔は何?
それに初めてちゃんと名前で呼ばれた気がした
これって玩具冥利に尽きるのかな?
と考えてすっかり彼に影響されている自分に気づく
つくづく梓馬がわからない
ううん…もっと知ってみたい
次へ
前へ
柚木 梓馬さまのお部屋へ