himawari







香穂ちゃんのことが好きだ

そう気づいた時から何も手につかなくて…

いっつもぼんやりしてた


オレは香穂ちゃんみたいな可愛い女の子に
どう接すれば良いかなんてわかんないし、
どうしたら喜んでくれるかなんてわからない


でも、思うんだ…

香穂ちゃんがオレのトランペットを好きって言ってくれるなら、

精一杯、君のために吹こうって



「火原、この後ラーメン食べにいこうぜ」

同じクラスの吉田の声でふと我に帰る

気が付くともう授業は終わっていた


「え…なに?」


「聞いてなかったのかよ…
 だから、部活今日ないんだろ?ラーメン食べに行こうぜ」

「あ……うん…。」

まだぼんやりした頭で相槌を打つ


そんなオレの耳に一つの音色が届いた


―――香穂ちゃんだ…



「ごめんっ。オレ、練習しなきゃ!」


「お…おい火原?」



吉田には悪いけどオレは“音”に向かって走り出してた



―――確かここからしたハズなんだけど……


そこは窓が開け放たれた音楽室…

扉の向こうで夕陽に染まってキラキラと輝く朱色の髪を見つけた



オレは逸る鼓動を抑えながら扉に手をかけた

香穂ちゃんは一人じゃなかった



――――え…柚木?


香穂ちゃんはこの間、柚木のことを嫌ってた風に見えたのに…

オレの中で矛盾が生じる





「何をそんなに拗ねてるの…?」


柚木が優雅にピアノのイスに座りながら香穂ちゃんに尋ねる


「別に……拗ねてなんていません」

「僕のお姫様はどうしたらご機嫌を直してくれるのかな?」


柚木は軽く笑いながら親しげに香穂ちゃんの髪を手に絡ませた


「もう…機嫌直せよ、香穂子。
 それとも俺に帰って欲しいの?」

今まで微動だにしなかった瞳が揺れ動く


「お前は素直だから好きなんだよ…
 俺の好きな香穂子の笑顔を見せて?」

「………っ先輩!」



香穂ちゃんが柚木の胸に顔を埋める



「どうして他の人にも優しくするの…
 わかってる…だけど見ていられないの…
 柚木先輩のことが好きだから」


柚木は笑みをたたえて香穂ちゃんに上を向かせると
とても甘い瞳で囁く


「俺もお前が好きだよ…
 俺のことを愛してるなら、丸ごと愛するんだ
 そういうのも含めて好きになったんだろう?」


「ずるい……」


「好きだよ香穂子」


柚木を否定する香穂ちゃんの言葉には強さは微塵も感じなかった

何がどうなっているのか
混乱している俺の頭ではよくわからなかったけど


香穂ちゃんが柚木を…親友を好きだってこと

それだけは痛烈にオレの心に刻まれた






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<あとがき>
だーーかーーらコレは火原っちの話!だというのに、毎回柚木さまにときめく自分…
もう病気としか思えませんっ(><)


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