himawari







「香穂ちゃん!」

オレは前を歩く女の子に声をかける

学院で行われるコンクールに普通科から参加してる

日野香穂子ちゃん


誰にも言えないけど…オレ…
香穂ちゃんのことが好きなんだ…



「あ、火原先輩こんにちは」


振り返ってオレに陽だまりみたいな笑顔をくれる香穂ちゃん

自分から声をかけたのに、オレの心臓の音がどんどん速くなる


「今日さどこで練習するの?屋上?」


香穂ちゃんと一緒にいたくて、そんな風に聞いてしまう

「そうかもしれませんし…そうじゃないような…」

視線を逸らしながら、歯切れの悪い香穂ちゃん

「決まってないとか?だったら一緒に中庭で練習しようよ!
 うん、二人でやれば楽しいしさ!」

「えっ!?ちょ…火原先輩!?」


オレは香穂ちゃんを中庭へと引っ張っていく

二人で…ってよりもオレが君と練習するの、とっても楽しいんだ

君の音色に包まれてるとオレのトランペットがいつも以上に良い音に聴こえる


さっきから弾いては弦を下ろしてる香穂ちゃん

オレはちょっと心配になってくる


「あの…さ、強引だったよね。ごめん。
 でも香穂ちゃんと練習できるチャンスとか久々で
 オレ、そのことしか考えてなくて引っ張ってきちゃってさ。
 君の気持ちとか考えてなかったよね。
 今日、練習したい気分じゃなかったのかもしれないのにさ。」

大好きな君を見つけて嬉しくて、連れてきちゃって
オレってホント自分のことしか見てないよな…

「そんなっ!
 私の方こそせっかく誘っていただいたのにすいません。
   違うんです…そのやっぱり屋上で練習しませんか?」

「うん?いいけど…」

中庭が嫌だったのかな?
とにかくオレが誘ったことがイヤなわけじゃなくて安心する


「火原も日野さんもここで練習かい?」

声がする方を見ると
信者…じゃなかった親衛隊に囲まれてる柚木が現れた

「うん。だけどこれから移動するんだ。
 そうだ!柚木もさ、屋上で一緒に練習しない?」

「そうだね…みんなで練習することなんて滅多にないし…
 僕も参加させてもらおうかな?」


親衛隊たちには悪いこと言っちゃったかな?
だけど、柚木とも練習したいしね
だって柚木はオレの親友だし!


「……柚木先輩は中庭で練習された方が良いと思います。
 演奏をお待ちになってる方がたくさんいらっしゃるじゃないですか?」


香穂ちゃんがテキパキとヴァイオリンを片づけながら
柚木と目を合わせず会話する


「そう…?そんなことないけれど…日野さんは僕がいない方が良いのかな?」

「そんなこと言ってません。
 私はただ、聴きたがってる方がいるのにって思っただけです」

それだけ言うと香穂ちゃんが俺の手を握った

「火原先輩、行きましょう!」

「えっ?///えっ///!ゆっ…柚木も後からおいでよ!」


急かされるように香穂ちゃんに手を引っ張られる


オレはその間ずっと…ずっとドキドキしっぱなしで

こんな早いリズム、メトロノームだったらぜったい壊れると思う




「香穂ちゃん、どうしたの?」

屋上に着いてオレはドキドキしながら彼女に尋ねる

だって…なんかさっきの香穂ちゃん変だったし
そっ…それにオレの…オレの手を触っ※●+@☆¥


「………私は柚木先輩抜きで練習したかっただけです」

「えっ!?///」


一度落ち着いたはずのオレの心臓がまたドキドキ高鳴った
それって二人だけで練習したかったってことかな…///

やっばい!オレ、今なんでもできそうな気がするよ!


中庭にいる柚木にも聴こえるんじゃないかってぐらい
オレのトランペットが響き渡る


ドキドキしたり嬉しくなったり

ね香穂ちゃん、オレ…君の言葉ひとつでこんなに変われちゃうんだよ


君にオレの想い…伝えたいな…





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<あとがき>
まだまだ修行中の火原っちです;
どうでしょう?魚月の精一杯の頑張りがこれです;ドキドキ


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