幸福を知った者には嫉妬を
幸福を知った者には不安を
幸福を知った者には不幸を
与えてやらなければ、かわいそうだろう?
与えてやらなければ面白くないだろう?
与えてやるよ…俺という監督が…
土浦は香穂子のために色々な楽譜を持ってきてやっているようだ
本当に優しいんだね
その無償の優しさ…俺にとっては不快でしかないんだよ
「日野…こんな所にいたのか?」
「土浦くん、ごめんね。探してたの?」
「まぁな…って志水…?」
「うん、寝ちゃったみたいなんだよね。何か放っておけなくて」
香穂子の膝の上では志水が気持ち良さそうに眠っていた
「俺が担いでどっか連れてってやるよ」
「いいよ。振動で起しちゃかわいそうだし…私は平気だし」
香穂子がにっこりとほほ笑む
「お前がいいんなら…良いけど…」
バツが悪そうに髪を掻き揚げる
――そうだな…お前が良くないんだろう?土浦…
「なぁ、今度の土曜日にでも
この間言ってた曲、合わせないか?」
「土曜日…?」
香穂子が一瞬伏目がちな目になる
「ごめんね…土曜日は火原先輩と練習することになってるの
土浦くんにしか頼れないのに…先輩がどうしてもって…
先輩の誘い…断りづらいでしょ?」
「あ…あぁそうだな…。断りづらいよな。
行ってこいよ。違う楽器と合わせるのも勉強になるぞ」
「ホント?良かった。土浦くんならそう言ってくれると思ってた。」
香穂子の満面の笑みを見せられて土浦も微笑んでいた
だけど心中、穏やかじゃないよな?
それなのに良い人になってしまうお前がつくづく面白いよ
俺は屋上の二階からその様子を満足げに眺めた
「あんなことして何か意味があったんですか?」
ベッドの中で香穂子が俺に尋ねる
「お前は何も考えないで俺の言う通りに動いていれば良いんだよ…
俺を満足させたいだろう?」
「先輩が…何をしたいのかわかりません…」
「わからない?わかろうとしろなんて俺は言ってないだろう?
お前は俺の言う通りにしていろ…俺が嫌なら離れるんだな」
ベッドから抜け出そうとする俺の腕を香穂子が掴む
「待って…好きです…先輩が…何でもしてあげたいから……
そんなこと言わないでください…」
「物わかりが良い女は大好きだよ」
香穂子にご褒美の口付けを落とす
まだまだ…ゲームは始ったばかり
*****************************************
<あとがき>
魚月はそんなダークな梓馬が大好きだ!!すっごいときめく(←重症です)
そして、それぞれのオンリーファンの方……すみませぬ…(><)
魚月はつっちーも火原っちも好きです!!それだけは伝えておきまする!!