結局、ホテルに一泊する形になった私は始発で自分の家に戻る
大学近くに部屋を借りているので、あと何時間かは眠れる
部屋着に着替えて携帯電話をチェックすると梁太郎から何回か連絡が来ていた
面倒だ…
たぶん、何も追及されないし、怒られない…
ただ『昨日は早くに寝てたの、ごめんね』って言えば良いだけだ
だからこそ、つまらない
時間ぎりぎりに大学へ行くと教室の前で梁太郎が待っていた
「おぅ…昨日さ、電話したんだけど、寝てたのか?」
「うん、昨日は早くに寝てたの、ごめんね?」
「いや…こっちも悪かったって思ってさ。
放課後も会えなかったから、何となく話したくて…時間とか考えてなかったな」
「そんなことないよ?今日はどっか行こう?ゆっくりできるから」
できるだけゆっくりの部分を強めて言ってみた
誠実な彼は爽やかな笑顔を向けて自分の講義が行われる教室へと向かう
何故そんな簡単に他人の言葉を信じられるのだろう
そんな彼を尊敬する気持ちもあれば、冷やかな眼で見る自分がいる
梁太郎といる時に常に感じること
私の中の黒い塊が、彼への嫌悪感を出させているのか…
それが私が面倒だと思うこと
考えるのが面倒
梓馬といると黒い塊が共鳴し合う
プラスとマイナスが引き寄せられるように彼の心と溶けあう
再会した時のあの何とも言えないシンクロニシティ
決して他人には見せない裏の部分に惹かれて惹かれてしょうがない
授業が終わったチャイムの音で現実へと引き戻された
「香穂、どうした?ぼーっとして」
振り向くと梁太郎が迎えに来ていた
「バレちゃった?梁太郎のこと考えてた」
上目遣いで彼を見上げる私を見て、梁太郎の頬が染まる
「バカ…行くぞ」
頭をコツンとされてポケットに手を入れる
そこにさりげなく私の腕を絡ませると
人が見ているからやめろと言う
いつも繰り返されるやり取り
バカらしい…
別に常に男のことばかり考えるほど、私は暇じゃない
彼は本気で信じているのだろうか…
それもどちらでも構わないけど
「なぁ…どこか行きたい所とかあるのか?」
彼からの質問に私は躊躇いながら答える
「………梁太郎の家に行ったらダメかな?」
「別に良いけど…そこで良いのか?」
「うん、なんか和めるし♪」
一人暮らしをしている梁太郎の家へと行く
授業の話とか今練習している曲のこととか…
当たり障りのない会話をしているうちに
20時になった
「泊まって行けよ」
梁太郎がキッチンに立ちながら、ぶっきらぼうに言った
その時、私の携帯がメッセージを受け取ったことを知らせる
『22時にホテルにいる』
私は無言で携帯を閉じる
「どうしようかな…明日、早いし」
「そうなのか?」
目の前に彼お手製のおいしそうな御飯が並ぶ
「なぁ…香穂…」
胸を後ろから掬うように揉みあげられると
首筋に舌を這わされる
「梁太郎…せっかくのごはん、冷めちゃうよ?」
「あぁ……」
構うことなくそのまま服を脱がされだす
カラダを重ねてからわかった梁太郎の意外な一面
この時だけの甘さが何とも言えないし、第一、上手い
梓馬も当然、そうなのだけれど…
「香穂…好きだ」
こうしている時は照れずに私への愛情を吐露する
だからこそ、私は彼と付き合っているのかもしれない
この落差があるからこそ…
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<あとがき>
つっちーはあんまりこんな女の子好きじゃないと思いますが。
そこは魚月の好みで小悪魔風に変えさせていただきました♪