隣では梁太郎がすやすやと眠っていた
改めて見ると彼はカッコイイと思う
贔屓目なしで本当にそう思う
時計は23時をつげていた
『今日は行けない』
短いメールを送ると
再び梁太郎の腕の中に戻る
彼の広く厚い胸板が男らしくて、とても好きだ
脚を絡めると鍛え上げられた筋肉がついた足に出会う
中性的な梓馬にはない男臭さ
「ん……」
「あ、ごめん起こした?」
梁太郎がまだ虚ろな目で私を見る
「いや…お前、さっき誰かにメールしてなかったか?」
「うん、のぞみに。代弁頼まれてたから
明日一限から出られる自信ないし…」
「へぇ……」
彼は勘が良い
機微に聡いと言うのかもしれないけれど
「ねぇ…おなか空かない?」
私は即座に話題を変える
これ以上、追及されるのも面倒だ
彼も私の意見に賛同して遅めのご飯にする
梁太郎の話は面白いけれど
何だか無性に梓馬に会いたかった
一週間後、梓馬からのメールでホテルに行く
「また、すっぽかすのかと思ったよ」
軽く笑いながら梓馬は部屋に入れてくれた
「この間はごめんなさい」
私は素直に謝った
彼に愛されたいから
「別に気にしてない…どうせ土浦絡みだろう?」
梓馬が意地悪く微笑む
「梓馬…」
彼の胸にそっと顔を埋める
「何…?」
わかっているのに、わざとそう聞く彼が本当に憎らしかった
「早く…時間ないんでしょう?」
何で梓馬の前だと演技できないんだろう…
可愛くなれない自分が嫌だ
「そうだな時間が勿体ない…このままで良いだろう?」
シャワーを浴びずに抱かれるのはあまり好きではないけれど…
彼を自分の思い通りに動かせないのが歯がゆい
梓馬と梁太郎の抱き方は上手いけれど反対だと思う
梓馬はツボを心得ている…それが彼の女慣れを表しているのかと思うと
見えない渦に巻き込まれそうになる
それくらい私は彼にハマっているのだろうか
愛しているとか好きだとか…そんな言葉じゃ言い表せない
私はこの気持ちをどう表現していいのかわからない
だから梓馬には愛情を示す言葉を告げられない
最もそんなものを告げた所で…
叶わない思いに現実に気が狂いそうになる
それとも
本当はわかっていて敢えて考えないようにしているの…?
今はとにかく梓馬が与えてくれる快楽にだけ順応することにした
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<あとがき>
結構、魚月的には切ない1話となりました
会えない時間より会ってる時の自分の中の闇が一番の敵だと魚月は思います