「梁、起きてってば…」
オレンジのカーテンの隙間から
朝の光が優しく射し込む
「ん…もうちょっと」
彼の寝顔は普段の表情と違って少し幼くかわいらしい
こんな特権は私だけだと思うと
心にほんわかとした幸せが生まれてくる
「なーんてな」
「きゃぁっ」
突然唇を奪われて思わず声をあげてしまう
彼はそんな私の驚いた顔を悪戯っ子みたく笑って見つめてる
「朝飯、和食で良いか?」
「うん」
そう言って部屋着を身に着けると彼はキッチンで朝食を作り始めた
私はシャワーを浴びにバスタブへ向かう
あまり広くはない2LDKのマンションだけど防音設備も整ってる
CDに楽譜に、ピアノ…
あとはセミダブルベッドで部屋はほとんど埋まってしまう
バスタブから上がると
彼が作ってくれたお味噌汁の匂いが鼻を掠める
「おう、ちょうどできたとこだから」
二人用のテーブルに着いてご飯を食べる
「ほんっと梁のご飯は何度食べてもおいしいわ〜」
「おだてても何もでねーよ」
そうやってむくれたことを言いながらも
はにかんだ様に笑う
穏やかで大切な時間…
「ええっもうこんな時間!?」
私たちは慌てて支度を始める
「梁〜っ!私の黒い靴下どこにしまったの??」
「あ?タンスの一番下にあんだろ?」
「ちがう!これじゃなくて!もうちょっと長いやつ!」
「そんなのどっちでも良いだろーが。俺からすりゃ同じだ!」
「全然ちがうよ〜長さが違うと履いてくスカートの丈も変わるの!!」
髪を掻きあげながら
「めんどくせーなー」
そう言いながらも梁は見事に探し出してくれる
「ほらっ。お前、一限からだろ?急ぐぞ」
戸締りを済ませると急いで階段を下りて
長いストールを腰に巻きつけるとバイクの後ろに飛び乗る
「ったくズボンにすりゃ良いだろ…」
「もう!毎日それじゃ、やだもん!」
呆れながら梁が運転してあっという間に学校に着く
「今日、テスト前だから遅くまで練習するかも」
「わかった、俺もバイトだし、20時くらいに迎えにくるよ」
そんなやり取りをしてお互いの教室へと向かう
梁と一緒に暮らして二年になる
付属の大学は高校よりも遠くにある家から通うのは、しんどくて
大学進学と共に1人暮らしを始めた
最初の一年はその部屋で過ごしたけど
今は梁が1人暮らしをしていた部屋で暮らしてる