シャワーを浴びるとメールをチェックする

それが私の順序であり、朝の日課


順序が逆になるとメールの内容に縛られた感じがして
イマイチ、リラックスができない


低血圧の私としては寝惚けたままの気だるい感じを引きずって
シャワーを浴びたいのだ



バスローブを身につけて髪をタオルで拭きながら携帯電話を見ると
あの人からメールが来ていた


『今夜、19時いつもの場所で』


それに返信をせず、携帯電話を閉じる

せめてもの私の反抗



大学の講義と実践と…私には刺激が少ないと思う


それはこの彼氏に対してもいつも思うことだ


私の彼氏は土浦梁太郎…

高校からの同級生で、ピアノ科を専攻している

なんだかんだ言っても梁太郎とはかなり前から知り合いらしいし、
お互いの親も顔見知りで、何の障害もない


取りたてて喧嘩もないし、取り立ててラブラブというわけでもない


ただ、安定した付き合いをしている




友人から見ればとても理想的で素晴らしいものらしいが
私からすればとても退屈で、とても窮屈だ


私には刺激が少ない





梁太郎とのデートを断って私が向かうのはいつものホテル



チャイムを鳴らして鍵が開く音を確認すると


しばらくしてからドアを開ける


少し間を置くのは、夜景を背景に佇んでるあの人の姿を見たいから




「結構、早かったんだね」




夜景をバックに優雅にワインを飲みながら椅子に腰かけるあの人

――柚木梓馬はとても綺麗だった



「就活も終わったし、今はわりと自由だから」


私は努めて無愛想に振舞う



「疲れただろう?浴びておいで…」



梓馬に促されるまま私はシャワーを浴びる


バスローブに着替えて部屋に戻ると

外の景色を見ながらどこか哀しそうな瞳をしている彼が目に入る



「………悩み事?」


「あぁ…そんなところかな?
 お前の頭で考えても仕方のないことだから…
 そんなことより、こっちにおいで…香穂子…」



慣れた手つきでバスローブの紐を引っ張ると

そのまま下に落とされる



梓馬は満足そうな顔で私の身体をじっと見る


「本当に飽きないよ…お前は」


梓馬の膝の上に腰かけさせられて何度かのキスを交わすと

そのまま快楽の波に引きづり込まれる




梓馬は私に刺激をくれる


左手の薬指に光る指輪が私に更なる興奮を与える





バレてはいけない秘密の関係




最高の刺激の中で私は今日も絶頂を迎える



この刺激があるから日常が楽しくなる


この刺激があるから日常がつまらなくなる



この刺激が止められない



まるで麻薬のように私の体に染みついた柚木梓馬



彼がとても憎らしい










*****************************************
<あとがき>
魚月の恋愛観とも言える話です;
誰にも求められてないけど、身を削ってみました☆



次へ