「香穂さん、こんな所にいたんだ」
屋上で練習している私に加地くんが話しかける。
「どうしたの?もしかして探してた?」
転校してきてからというもの、私を一日一誉めしている加地くん…;
しかも何かにつけて、ついて来られるのも意味がわからない。
「探してたよ…君は僕の女神だからね」
今日も心臓に悪い一言を言われる。
と同時にこんなカッコイイ人に言われた言葉に真っ赤にならないハズがない…
でも私が女神?加地くんは目が悪いのかもしれない。
「……私、そんな加地くんに言われるような子じゃないよ。」
赤くなった顔を隠したくて下を向いた
「君は自分の魅力をわかってないんだよ。
香穂さんの音色は僕に極上の幸せを与えてくれるんだ…」
「極上の幸せ?」
「うん…君が音色を奏でると辺りが美しく輝き僕の心に光を与えてくれる
…まるで太陽のように」
「太陽?そうかもしれないね」
そこには屋上の扉を半分開けて柚木先輩が立っていた。
「柚木さん…柚木さんもやっぱりそう思いますよね?」
加地くんがにっこりとした笑顔で微笑む。
「思うよ…加地くんとはまた違う感覚かもしれないけれどね。
日野さんのファンという君とでは対等じゃないっていう…ね」
「対等じゃない…ですか?」
加地くんが聞き返す。
「加地くんは日野さんの音色に惹かれて転校までしたんだよね?
僕はそんな気持ちはないっていう意味だよ」
今度は先輩がにっこりとした笑顔で返す。
「あぁ…そういうことですか…僕は、すっかり違う意味かと思いました」
一瞬、加地くんから笑顔が消えると私にまた笑顔で振り向く。
「もうすぐ昼休みも終わるよ?僕、先に行ってるね」
柚木先輩に、一礼し「失礼します」というと加地くんが屋上を去った。
「相変わらず、気に入らない奴…」
柚木先輩が途端に素顔になる。
「そうですか?何か私にはよくわかりませんでしたけど…」
普段外見上は穏やかな二人のやりとりに棘がある気は確かにした。
「あいつ…俺に喧嘩を売るなんていい度胸してるな。
まぁ、俺の真意も伝わったんだからバカじゃないことは認めてやるけど」
「真意ですか?」
「知りたい?」
先輩が私の髪をいじりながら意地悪そうな瞳で詰め寄る。
「べっ別に知りたくありません」
柚木先輩からのこういう質問はたいてい良いことはない。
私は髪をいじる先輩の手を払って、ヴァイオリンをケースに入れた。
遠くで予鈴が鳴る音がする。
「いけない…授業始まっちゃう。」
急いで屋上を出ようとする私を呼びとめて柚木先輩がこう言う。
「さっきは香穂子が好きだって言ったんだよ?俺の気持ちも考えずに行っちゃうの?」
私は屋上のドアノブに手をかけたまま
その言葉に授業が始まることなんてどっかに飛んでしまった。
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<あとがき>
自分で書いてなんですが…相変わらず難しいですこの二人のVS(>△<)
とにかくお礼になるよう頑張ります!