気に入らないんだよ…
あの男…
目障りでしょうがない…
もちろん、悪い意味でね
「日野さん、今から練習?」
「あ、柚木先輩。そうなんです。」
「ちょうど良かった。僕、練習室取れなかったんだ…
一緒に使わせてもらえないかな…?」
まぁもちろん嘘なんだけどね
「えっ?いや…その…;」
「やっぱり…ダメかな…?
コンクールで良い成績を取っている日野さんの練習をゼヒ参考にさせてもらいたかったんだけど…
そうだよね…僕がいたら邪魔だよね?」
周囲には俺の親衛隊…お前の答えは決まってるだろ?
「とんでもないです。むしろ光栄です;」
「…そう?ありがとう」
俺は外向きの笑顔でほほ笑むと練習室へと入った
「先輩、勘弁してくださいよ〜寿命が縮みますよ…」
「お前が即答してれば、あんな目に合わなかったんだよ」
「あ、即答できなかったのは、もう一人ここに来るからです。」
「もう一人?……森さんか?」
日野が何かを言いかけた時、練習室のドアが開いた
「日野さーん♪」
「加地くん、場所迷わなかった?」
「大丈夫だったよ。日野さんが優しく教えてくれたから。」
金髪にピアス…ネクタイを緩めて見るからに軟派な雰囲気を漂わせる
――なんだ…こいつは…
俺のきょとんとした表情を見て日野が紹介を始めた
「柚木先輩、こちら昨日転校してきた同じクラスの加地くんです。」
「初めまして。」
そいつ―加地は俺に愛想笑いを浮かべると、くるっと日野に向き直った
「日野さん、僕最近練習してないからどうすれば良いのかわからないんだよね。
最初から教えてくれる?」
日野は俺の機嫌を伺いながらも目の前の加地の意見を尊重しだした
「まずはね…」
加地のビオラを取り出すと調弦の仕方から手取り足取り教えている
一方、肝心の加地はというと…
「日野さんの爪の形、めちゃめちゃ綺麗だね…手もすべすべだし…」
「ちょ…っ///加地くん真面目に聞いてる?」
「やだなぁ…聞いてるよ?怒ってる日野さん初めて見た。
そんな顔もかわいいね。」
もう目の前の日野は面白いぐらいに赤くなってる
だけど…俺としては面白くないんだよ
それにこいつ何か引っかかる
「加地くんだったね?楽器のことなら僕が教えようか?一応音楽科だしね。」
俺の申し出に日野も助かったという感じだ
「そうだよ。柚木先輩の方が私より教え方上手だし」
「せっかくなんですが…僕は人見知りが激しいので…日野さんじゃないと…
それとも日野さんの迷惑?」
「め…迷惑じゃないよ」
「良かった」
人見知りだと?笑わせるな
迷惑かと聞かれて日野が迷惑だと言うはずがない
計算した上での行動だ
―――この男、あなどれない
「そうだ…言い忘れてたんだけど、金澤先生が渡すものがあるって日野さんを呼んでたよ」
「じゃあ、私ちょっと行ってきます」
日野が出て行った練習室
俺はこの男に感じていることを外向きの笑顔でぶつけてみる
「君はわからないフリをするのが趣味なのかな?」
加地は俺のこの言葉に少し驚いたように目を見開くと
すぐ笑顔になってこう答えた
「そんなことないですよ。あえて言うならかわいい日野さんを見ること…ですかね。
僕に教えようとしてる一生懸命な日野さんの姿、かわいいじゃないですか」
「ふーん…その点は僕も同感かな。」
「柚木先輩とは気が合いそうです。」
「僕も君と気が合いそうな気がするよ。仲良くなれそうな…ね。」
この俺に喧嘩を売るとは良い度胸だ…
仲良くかわいがってやろうじゃないか
俺の玩具を欲しがったこと後悔するなよ?
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<あとがき>
柚木さまと、まともに戦えるのは彼なのでは?という妄想を膨らませる魚月。
だけど…結構難しくてうまく表現できたでしょうか?
アンケートでVSものSSが人気だったため急きょアップしました。
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