一瞬だとしても











最初に刻まれた記憶は真白な一面に滴る赤い血と綺麗な男の子…


―――玖蘭枢さま



「う…ん」

ぼんやりとした頭がだんだんハッキリしてくる


ここどこ…?


確か子どものママを捜してたんだよね…

そうだ…頼ちゃんは…?


「気がついた?」

声がする方を見ると、そこには枢先輩の姿があった


「枢先輩…私、小さい子のママを探しててそしたら急に意識が…」

「子どもは生気を吸うから…そのせいかもね」

枢さまが少し笑った後、こう言った


「僕とは話さないんじゃなかったの?」


そうだ…私、零のことで枢先輩に怒ってそれで…


「あれは…枢先輩が私の言ってること聞いてくれなかったから…」


「そうだね…ごめん優姫…」


枢先輩にそう言われると私は弱い…


じっと見つめられるダークレッドな瞳に困って私は視線を泳がせた


一条先輩が迎えに来て枢先輩が出て行った後、広い部屋で私は一人ぼんやりとしていた


さっきまで枢先輩がいた場所に彼の温もりがある


「枢さま……」


小さい時に呼んでいた名前

私は記憶を刻まれた時から一人の男性を想ってきた…ずっと

世界に枢さましかいなかった

枢さまのことが大好きだった


だけれど気づいてしまった…私と枢さまは違うということに…




『瑠佳……』

枢さまはそう言いながら、その時は知らない女の人の首筋に…牙を立てていた



あんなの枢さまじゃないっ

枢さまは、そんなコトしない



元人間だった零に吸血されているのにヴァンパイア…しかも純血種である枢さまにはそれを認められない



「おねえちゃん…ごめんなさい…」


ふと気がつくとドアが少し開いてあの子が顔を覗かせていた

あ…そういえば

枢先輩にも一条先輩にもここにいることを気づかれないようにと言われていたんだった


「私がここにいることを…」


廊下に出るとあの子はもういなかった


華やかな光に自然と足がそちらに向く

目に飛び込んできたのは私が想像もできないくらい豪華なパーティだった

それ以上にパーティー会場のどんな装飾よりもそこにいる人々…ヴァンパイアたちの煌きの方が勝る

そしてその中心にいて最も輝いてるのは…

枢さま


最初は好奇心から覗いていたけれど、まざまざと自分と枢さまの違いを見せつけられるようで嫌悪感が出てくる

もう言いつけ通り戻ろう…


そう思った時だった


「枢さん…純血種同士、助け合っていきましょうね」

すごい綺麗な人…見たこともないくらいに…

そして発する言葉――純血種同士――

枢さまがその人の手に口付けた


見たくない!



私は元の部屋に戻っていた


胸が締め付けられる


枢さまと私はどうやったって同じになれない


私は枢さまに恋する以前に同じ世界にいないなんて


何て矛盾なんだろう


世界には枢さましかいなかったのに



「優姫…言いつけを守らなかったね」

気が付くと枢さまが立っていた


「枢さま…」

「懐かしいね…」


枢さまにソファーに押し倒される


「どうして言いつけを守らなかったの?」

「子どもが気になって…だから…」

「それだけ?」

「………そうです」


どんなパーティーか好奇心があった


その中にいる枢さまを見たかった


でもそれは全て私を傷つけるものでしかなかったけれど



「どうして私に構うんですか?」

枢さまが急にどうしたのかという顔をする


「私なんて枢さまと生きる時間も違うのに」

言ってて悲しくなる

私は枢さまにとって一瞬に過ぎない


「そうだね…君たち人間が生きている時間は僕たちヴァンパイアにとって一瞬に過ぎない」


私が思っていることを言わないで…わかっているから…

枢さまが少し目を伏せて、また私の瞳を見つめた


「優姫…僕と同じ血を喰らう化け物になって、長い…長い時を僕と生きる?」


「えっ?」


考えたこともなかった


枢さまは純血種…枢さまに噛まれれば私もヴァンパイアになれる…

この人と一緒にいられる…ずっと…


枢さまもそれを望んでくれるのですか?


「………はい」

私は思わずそう答えていた

枢さまの唇が私の首筋に近づいてくる


この人になら牙を立てられても構わない

この人になら何をされても構わない


小さい時からのトラウマのヴァンパイアに襲われようとも

しかもヴァンパイアの中のヴァンパイアだったとしても


「冗談が過ぎたみたいだね…ごめん、だから泣かないで」

えっ?

気が付くと私は泣いていた

体も少し震えている


どうして?枢さまになら何をされてもいいはずなのに


「これに懲りたら、危ない所に首を突っ込んだらダメだよ?」

違う

枢さまは危なくなんてない


だって、枢さまは私の…私の…



「枢さまっ!」


私から離れて背を向けようとした枢さまを引き留める


「枢さまから一瞬だったとしても…傍にいても良いですか?」

辛いだけなのに…

枢さまの傍にいて違いを見せつけられて

綺麗な人たちと自分を比べてしまって

辛いだけなのに…


「傍に居て…優姫…僕にとって優姫は一瞬じゃないから」

「え?」

枢さまに抱きしめられる

広い胸に広がる枢さまの香り…昔から変わらない


「僕にとって優姫は永遠だよ」








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<あとがき>
ヴァンパイア騎士初書きです〜
実は今、全巻貸し出し中のため、これが何話なのか明記できません;
覚えてなくてすいません;
明日のアニメ最終回前にアップしたく、載せちゃいました。
これからまだまだ精進いたします(2008.06.30)