俺は初めて女の子と付き合うことになった
彼女の名前は日野香穂子
学内コンクールが縁で知り合った
俺たちはヴァイオリン・ロマンスとして学校中の注目の的だ
俺としてはそれはどうでもいい
何度も言うが、人生で初めてのため
何をどうして良いのかわからない
女性の好むものがわからないのは勿論
いや…だから…その……なんというのだろうか…
そういうことも全くわからない…///
「蓮くん?」
「かっ香穂子!?///」
どうしたの?と俺の顔を覗きこむ彼女
ぷっくりとした桜色の唇に目が引き寄せられてしまって…
そんなに顔を寄せられたらこっ困る…///
「何でもない!///」
「そう?」
彼女の体が離れると同時にほんのりとした良い香りが
俺の鼻を掠めた
だっだめだ…密室の練習室なんかにいたら
俺がだめだ!
「屋上に行ってくる」
「え?じゃあ私も行く」
俺は彼女と二人きりの密室を早く出たくて
先にすたすたと歩き出した
ついていないことに屋上にも人影がない…
だが外だし…その…変な気分にならないだろう
「すっごい良い風だね♪」
わーいとはしゃぐ彼女…
その短い丈のスカートが風でふわっと浮かぶたび
俺の中には困るという感情と………期待が芽生えてしまう
『さっきからこればっかりだ…俺も修行が足りない…』
俺は自嘲気味に笑うと髪をかき揚げる
愛しい彼女に何て想像ばかりしてしまうのだろう…
自分が情けない
「きゃっ」
「危ない」
俺は転びそうになった彼女を抱きしめる
腕の中にすっぽりと収まってしまう彼女
細くて華奢な体は力を入れたら壊れてしまいそうだ…
肩にあった手を徐々に下へとさげていく
なだらかな彼女のカラダのラインがわかる
その柔らかさに…
一際近くに感じる彼女の香りに
酔ってしまいそうだ…
――触りたい――
――壊してしまいたい――
「ありがとう」
腕の中にいる彼女が俺を見上げてほほ笑む
「離れてくれ///」
俺は彼女を突き飛ばした
彼女の茶色い大きな瞳…
その綺麗な瞳に見つめられて俺は自分に罪悪感を感じる
自分が恥ずかしい…
「蓮くん、私のこと好き?」
香穂子の質問に驚いた
「何故そんなことを聞く?」
「だって…付き合ってから変なんだもん
今だって離れろとか…一人で練習しようとしたり…
私のこと…嫌いになったの?」
違う…そうじゃない…そうじゃないんだ…
今にも泣き出しそうな顔の香穂子
「違う!君が好きだ…」
「じゃあどうして?」
「傍にいると……触れたくなる…///」
「えっ?」
「二人っきりだと…ドキドキして…
君に何をしてしまうか…わからない///」
頬が熱い…こんな時、もっと上手く言えたら良いのに…
香穂子を見ると、彼女の頬も桜色に染まっていた
「…………いいよ」
暫くの沈黙の後、香穂子が口を開いた
「えっ///」
「私だって蓮くんのこと好きだもん///」
香穂子は近づいてきて俺のブレザーの裾を掴むと
俺を見つめてゆっくりと目を閉じた
これは…つまり…そういうことなのだろうか…
俺は香穂子の肩に手を置くと彼女の唇に引き寄せられるように…
バッターン
「あっれ〜?香穂ちゃんと月森くんもここにいたんだ?」
「「ひっ火原先輩っ!?」」
俺たちは咄嗟に離れる
火原先輩はきょろきょろ辺りを見回している
「柚木に呼ばれてきたんだけど…柚木は?」
いるわけがない…何故ならこれは策士・梓馬の差し金だから
頑張れ月森蓮!負けるな月森蓮!
明日を信じて…蓮くんの恋愛奮闘記は続く!
*****************************************************************************
<あとがき>
何気に続編も検討中。次が浮かばなかったので単品であげました。
|