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彼女の特権








「ゴホッゴホッ」

「蓮くん風邪ひいたんじゃない?」

「いや…大したことじゃない…」

蓮くんと付き合い始めてまだそんなに経ってない

何だか友達だった頃と全然変わってないし…

しかも私ったら蓮くんって名前で呼ぶことも…まだ恥ずかしいっ






「自宅に楽譜を忘れてきてしまった…悪いが俺は今日は先に帰る」

「え?じゃあ私の楽譜でやる?」

「いや…いい。人の楽譜だと慣れない…  明日も一人で練習したいから…会う約束も延期してくれ」


そっけなく言うと蓮くんは一人で帰って行ってしまった


周囲からは「やっぱり月森くんってクールだよね~」なんて
声も聞こえて…

それに何て言うか…彼女として…どうなの?



今日は土曜日で学校はお休み

本当は、れ…蓮くんと会う約束だったんだけど…


も~う!私ばっかり空回りじゃん!!

未だに名前呼ぶのにだってドキドキしてさ…

バカみたい



私は昨日の蓮くんを思い出す

そういえば前もあんなことあったな…

確か天羽ちゃんに追われてて…でもすっごい熱だったんだよね

んで無理しててさ…


今回もだから延期したのかな?



なんて考えたら何だか心配で私は自宅を出た



わーーーー××

勝手な思い込みで蓮くんの家まで来ちゃったけど…
もし違ったらどうしよう…

それこそ「一人で練習したいって言っただろう?」とか言われたら…


こ…怖いけど…そしたら、このスズランあげよ

苦しい言い訳だけどお庭で咲いたからお見舞い~とか言って早々に立ち去れば良いよね!?

ってゆーかその段階で私って彼女なの~~~~?




脳内で激しい妄想を繰り広げながら蓮くんの家のチャイムを押した


『はい』

インターフォンから蓮くんの声が聞こえる

「あの…えと…日野です」

『香穂子?少し待っててくれ』



あ~~~~やっぱり「香穂子です」って言えないっ


「どうしたんだ…?」

そこにはいかにも辛そうな蓮くんが玄関のドアを開けていた


「蓮くん大丈夫?」

「あぁ…大したことない」

「大したことなくないよ!すごい熱じゃない!」

私は蓮くんをベッドに寝かしつけた

「何か食べた?」

「いや…食欲がない…それに今日はお手伝いさんもいないから…作るのも…」

「もう!そんなんじゃダメだよ!風邪には食べ物!待っててね!」


私は勝手に蓮くんのお家の台所を借りると買ってきた材料でお粥を作った


「蓮くんハイ」

「食欲がないから…」

「じゃあ私が食べさせてあげるから」

「っ!?」

私はレンゲに一口大のお粥を掬うとフーフーして蓮くんの口に持って行った


「ほら!言うこと聞いて!」

蓮くんは渋々口を開いてパクッて食べる

サラサラな前髪も熱で少ししっとりしてて

顔も赤くなってて…何だか今日の蓮くんカワイイvv

いつもはクールで近づき難い雰囲気なのに…
こんな蓮くんになら私もいつもより緊張しないかも


蓮くんは結局全部食べてくれた


「お薬もね、一応買ってきたよ」

パッケージを見て蓮くんがたじろいだ

「っ!それ…粉じゃないか!」

「そうだけど…?」

「…俺はそんなに熱はない!飲まない!」


突然布団にくるまりだす


「な…何言ってるのよ?明らかに熱あるじゃない!
 ホラ、飲まなきゃ治らないよ?」


蓮くんが布団の中で小さな声で言った

「苦いから…いやだ…」


―――え?


布団をめくって蓮くんの顔をみると熱のせいだけじゃなく顔が赤くなっていて…


「だから…今日は一人で練習するって言っただろう?」


再び布団を被ってしまった


これって…蓮くん?


いつものクールな蓮くんと違って…とってもかわいい


「苦くないよ。なんか甘いものとか食べれば良いじゃない?」

「あぁ…」

いい加減バツが悪いと思ったのか蓮くんが起きて薬を飲み出した


飲み終わったら突然私に抱きついてきて
長く…長く…口付けされる…



「君の言った通り甘いものを食べた」


熱で潤んだ瞳…熱い吐息でそんなこと言われたら


さっきまでかわいいって思ってた私の思考は完全にフリーズ…



こんな表情見せてくれるのも彼女の私だから

彼女の特権って思って良いよね











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<あとがき>
アップし忘れのものを引っ張ってきました☆
まだ魚月が元祖蓮くんファンだった頃の作品(笑)
蓮くんは絶対こんなことないだろうと思いながらも、もし…もし…されたら完璧鼻血ものです!