「おい、月森」
教室を出た途端、最も会いたくない人物に出会った
「なにか?」
普通科の彼―土浦梁太郎が音楽科に…しかも俺の所に来るなんて珍しい
土浦は居心地が悪そうに前髪を掻き揚げると言葉を続けた
「お前、日野のこと…なんか知らないのか?」
「なぜ…?」
「ここ一週間ずっと連絡とれないんだよ。
学校にも来てないし…携帯にかけても留守電で…」
そんなことか
俺は彼の言葉を無視して先を急ごうとする
「待てよ!お前、日野が心配じゃないのかよ?」
君は何か間違っている
「君には関係ないだろう?」
俺は土浦に冷たい目を向けると家路に着いた
最近の俺の日課はヴァイオリンの練習よりも地下にある宝石を磨く事だ
重い扉を開けるとビロードがひかれた床が現れる
天蓋つきのベッドに疲れて横たわる俺の宝石
「月森くん…どうしてこんなことするの?」
彼女の大きな瞳から光る雫が溢れだす
頬を伝って俺の掌に落ちると消える…その美しさにさえ俺は心を奪われてしまう
テーブルの上で携帯電話がその静寂を壊す
ディスプレイには“土浦梁太郎”の文字が浮かんだ
「出させて」
香穂子が俺に懇願する
かわいい君の頼みだが、それは聞いてやれない
ためらうことなく殺風景な部屋を彩るための水槽の中に投げ入れる
泡と共に彼女の携帯電話が底へと落ちていく
真っ暗になったディスプレイが彼女に圏外になったことを告げている
そう…もう連絡する手段はないと
白いロングドレスに身を包んだ彼女の片足には鎖を嵌めてある
誰にも盗られないために
「あまり動いてはいけないと言っただろう?」
鎖が喰い込んだ彼女の白い足首には、動いたためか赤い模様が付けられていた
俺は跪くと鎖を外してその模様に口づけた
髪の毛から足先まで…彼女の全てが愛おしくて仕方ない
この瞳に映るのも
この声を聴くのも
この香りを抱くのも
俺だけだ…
他の誰の目にも晒さない…
誰にも触れさせない
絶対に手放さない
「香穂子…君を愛しているよ…」
この箱の中で俺のために輝いてくれ
俺だけのために
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<あとがき>
魚月のブラック蓮くん第二段でございます。
実はこれ、魚月の高校時代に行った妄想だったりします。
あ…引きました…?;;;;
大好きな俳優・福山さんにこうされたい!!と話したところ
(他の友達は遊園地デートとかかわいいことを言っていた…)みんな大爆笑…;;
妄想女王の異名を頂きました。。。そして今に至る。
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