独占欲










「それで?23時は何をしていた?」

ヴァイオリンを構えながら蓮くんが私に尋ねる

「その時間は…お風呂かな?」

「………そうか。返信が遅かったから心配した」

「ごめんなさい」



傍目から見れば私たちはラブラブらしい

毎日一緒に登下校して、休みの日も会っている


それだけじゃない

家に帰ってからも蓮くんから1時間ごとにメールが届く


『今は何をしている?』

『どこにいる?』


そんな短文で、私も『テレビ見てるよ〜』とかそんな返信なのだけど…




この間、菜美たちと出掛けた時は………大変だった


毎時間、電話が鳴って


『変な男に絡まれていないか』とか

『露出する服を着ていないか』とか……


しまいには菜美が電話に出て蓮くんとケンカし始めちゃったんだよね…(><)



蓮くんのこと…大好きなのに…蓮くんしか好きじゃないのに…


そんなに信用ないのかな……



なんか寂しくなってぼんやり窓の外を見る



サッカー部が練習してる

あ、土浦くんだ


土浦くんがゴールを決めてみんなでじゃれあってる

なんかそういう爽やかな姿が微笑ましかった




「どこを見ている?」


気が付くと蓮くんが私のすぐ傍に立っていた


「あ……」


ただ、「サッカー部」と言いたいだけなのに、見上げた蓮くんの目が恐くて言葉が出ない


「…………土浦を見ていたのか?」


一層、顰められた眉…
普段より低い声に……

声が出なくて、ただ首を横に振る



「では誰を見ていた?」

蓮くんが私にどんどん詰め寄る


「……誰も……見てない」


壁に追い詰められた私が、ようやく絞り出した声で言った



「誰も見ていない?では何故、外を見たんだ?
 目の前に俺がいるだろう!」


ものすごい力で肩を壁に押し付けられる


「……っごめんなさい…」


私は涙を流して彼に許しを乞う

蓮くんの瞳には媚びたように上目遣いで見つめる私が映っていた


「………君が反省しているなら、それでいい」


さっきまでの態度がほぐれて

蓮くんが優しく私を抱きしめる



「香穂子…君が好きだ……君は俺だけを見ていれば良いんだよ」



ゆっくりと口づけられる


長く情熱的なそれは


―私がもう二度と他を見てはいけないー


そんな契約を思わせるものだった











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<あとがき>
他サイトでのキリリク作品を見つけて引っ張ってきました〜
魚月の手にかかるとブラックになりがちで申し訳ない…;