悪魔なキューピッド










一目瞭然…

俺がこの状況を例えるならこれに尽きる



だけど、本当に面白い…当人同士はまったく気づいてないんだからな




「柚木〜〜!」

声を聞けばわかる
たぶん、あいつ――火原は犬のように尻尾を振ってやって来てるのだろう


「火原、そんなに大声を出さなくても聞こえてるよ…?
 どうしたの?そんなに慌てて」


「さっき香穂ちゃんに会ってさ!久々に話したんだ〜
 普通科ってやっぱ音楽科とは違う授業だから、聞いてて楽しくてさ!」


またか…「香穂ちゃん」

口を開けばその単語ってこと、お前は気付いてないのか?


「ふ〜ん、それは楽しそうだね。
 でも、理由はそれだけ?日野さんの話はどれも面白い…いや好きみたいに聞こえるけど?」


「すっ好…!!!って。あ〜〜〜!何言ってるんだよ!
 べっ別にそういうわけじゃないよ!」


本当に面白い…顔が一気に朱に染まるんだから


「なにかおかしいことを言ったかな…?
 ただ、話のことをしただけだったけど?火原は何と勘違いしたのかな?」


「かっ!かっ…かっ……///」


俺は耐えきれなくなって腹を抱えて笑いだした


「柚木〜!からかうなんてひどいよ!」

「ごめん、ごめん。別に他意はないよ?
 そう、日野さん屋上で練習してるみたいだよ?行ってみたら?」

「え!そうなの!行ってみるよ。サンキュー柚木!」


次の瞬間には満面の笑みで屋上に向かってるんだから
これで、気づくなって方が無理な話だ


こんなに真っ直ぐに動くくせに…何だっていつまでも平行線なんだか…




次の日、今度は日野に会った


「柚木先輩…あの…今日は火原先輩と一緒じゃないんですか?」


「火原…?そうか、お前は普通科だから知らないんだな。
 高熱を出して休んでるんだぜ?」
「え!あのっ!火原先輩の住所とか?」

「あー違った。それは火原のことじゃなかったよ。
 苗字が似てる他の奴のことだった。ごめんね、日野さん。」


日野が顔を赤くしながら恨めしそうな目で俺を見る


「お前さ、そんなに火原が好きならデートにでも誘ってみたら?
 火原は何気に人気あるぞ。ボヤボヤしてると他の女に盗られるんじゃないか?」

「そっ…そんなこと、柚木先輩に言われなくても…」

「わかってるんだったら行動しろよ。そして俺を楽しませろよ?」


本当、いい加減にして欲しい…二人の話を聞かされる俺の立場にもなれよ…

惚気てるとしか聞こえないぜ?



そう思っていたある日の放課後

音楽室で火原と話していると日野が現れた



「かっ香穂ちゃん、どうしたの?」

「あの…火原先輩にお話があって…その今度の土曜日とか空いてますか?」

「えっ!う…うん…」

「だったら…もし…御迷惑じゃなかったら…」

「う…うん///」


なんなんだよ…このやり取りは…俺は半ばイライラしてくる


「見たい映画があるんですけど、一緒に行ってもらえませんか?」

「えっ!えっ…あの…っ…///
 そうだ!柚木もさ、一緒に行こうよ!みんなで行く方が楽しいし!」


――誘われたのはお前だろう?なんで俺まで行かなきゃいけないんだよ。

心の中では激しく突っ込みながらも、あくまで穏便にことを進める


「僕…も行っても良いのかな…?日野さんは火原を誘ってるわけだし…ね?」

「柚木先輩も来ていただけると、嬉しいかもです。」


――日野っ!お前もか!!

あれだけ釘を刺しておいた日野への期待も裏切られた


平行線にピリオドが打たれるかと思ったのに…


「………わかったよ。僕も行こうかな?
 チケットとかは僕が用意しておくから…気にしないで?」





当日、俺はもちろん家にいる

全部貸し切った映画館に日野と火原が二人


上映されるのはベタすぎるぐらいの恋愛映画



火原と日野がゆでダコみたいに真っ赤になるのが容易に想像できるよ


まったく世話がやけるね…


俺にここまでやらせるなんて大したもんだよ

だけど、これでも平行線だったら、わかってるよな…?


お仕置きだから覚悟しておけよ










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<あとがき>
40000hitキリリク作品、『グレーな柚木さまに苛められる火原っち』なわけですが
全然リクエストに応え切れてねーーーーっ!
ホント、すいません。そして柚木さまにかなりときめいててすいません!
(↑お前がときめいてどーするっ!?)
えーーーん;所詮、魚月の実力ではこれが精一杯でして…;
せっかく、メールまで頂いたのにすみません(><)
もっと頑張ります〜!
これに懲りず、次も狙って頂けると幸いですvv