はじめての気持ち










「やっべ〜っ!遅刻遅刻!」

「和樹、まだ学校には早い時間なんじゃないのか?」

「学校にはね!練習あるんだよ。後輩の子と」


俺は親父が作ってくれた朝ごはんをかき込む



慌てて玄関を出ると彼女との待ち合わせの交差点にダッシュする



「ごめんね、日野ちゃん!待った?」

「いいえ〜今、来たところです。それより火原先輩?」


日野ちゃんがくすくす笑いながら俺をみた


「えっ?なに?」

「焦ってたんですか?ごはん粒ついてますよ?」

「えっウソ!どこどこ?」

慌ててるオレをよそに、日野ちゃんが微笑んで頬に手を延ばした


「ここです」


そう言ってごはん粒を取ると、そのまま口に入れてしまった


「あっ!あの日野ちゃんっ!?」

「え?変ですか?」

「いや…変ってゆーかさ、なんてゆーかさ……
 なっなんでもない!急ごっか?」


変なのはオレかもしれない…ドキドキしてきて…

朝練するだけなのに
なのに…こんなに浮かれてるオレがいる



「火原先輩…顔赤いみたいですけど、熱でもあるんじゃないですか?」

香穂ちゃんが心配をそうな顔でオレを窺う


「あーーーーーっ///赤いのは違うから!
 えっと…その…そう!走ってきたから!」

「はぁ…それなら良いんですけど…?」


なんだろ…これ…とっとにかく話!話!!


「それにしてもさ、朝の空気って気っ持ちいいよね〜!
 あー早くトランペット吹きたくなってきたよ!」

「じゃあ屋上で練習しましょうか?」

「それ賛成!」



日野ちゃんと練習してると一人で吹いてる時よりも
ずっとずっと…楽しく感じる

トランペットが好きだな
音楽が好きだなって、すっごく思えてくるから不思議だ



「火原先輩、今日は練習に付き合ってくださってありがとうございました」

弦を緩める手を止めて、オレを見つめながら日野ちゃんが言った

「いいって!それに誘ったのはオレだしさ。
 どう?少しは不調とか解消できたかな?」

「まだまだって感じで…」

日野ちゃんが自分のヴァイオリンを見つめた

伸びやかであったかい日野ちゃんの音が最近変わったってこと
オレだって気づいてる

それに日野ちゃんが落ち込んでるってことも

だから、なんとかしたかったんだ

落ち込んでる日野ちゃんを見て放っておけなくて
朝練しよって誘った


オレ…君のために力になれたかな…?


「火原先輩のトランペットを聴いてると元気になってきて
 よぉ〜し、がんばるぞって気持ちになれるんです。
 不調でも、練習するのやめちゃだめだって思えて…」

「ホントに?オレのトランペットが力になれてるんだったら良かった。
 嬉しいな」

「力になれてるなんてもんじゃなくて…
 好きですよ?先輩の音」

「えっ!えっ好き?ってあっあ〜っ、音ね!音!」

なに勘違いしてるんだろ…恥ずかしいなオレ…


「先輩?やっぱり熱あるんじゃないですか…?」

「だ〜〜〜っ!ないから!これは練習で息を出しすぎたからだよ!
 またさ、こうやって練習しようよ。
 もっとさ、日野ちゃんに元気わけてあげる!」


「はい。宜しくお願いします。」


日野ちゃんがにっこりと微笑んだ





心に広がってくあったかいこの気持ちって…


今度、君を“香穂ちゃん”って呼びたい


オレが初めて好きになった女の子だから










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<あとがき>
森田さんが好きだ!という勢いで書いてしまいました…;
言い訳は今日の日記にて(2007年9月2日)
そして、、何より火原ファーストなファンの方々、お目汚しですいません!(土下座)