まさか俺が玩具と付き合うことになるなんてな…
隣でまぬけな顔して眠ってるのは
この間まで俺の玩具として存在していた日野香穂子
そんなこいつに、こんな感情を抱くなんて俺もどうかしている
「おい、起きろよ。」
いい気なもんだ…いや、無防備極まりないというのか
昼ご飯を食べた後の屋上で、すっかり眠りこけている
「ん…ゆうくん…?」
―――は?
「……あっ先輩、おはようございます」
深々と頭を下げてくる香穂子
――それにしても、さっき何て言った…
「うっわ…もうこんな時間、次移動教室なのに…!!
先輩、私、先に行きますね〜」
「あぁ……」
俺は香穂子の様子にあっけに取られていた
いや…俺の聞き間違いか…
男の名前を口走った…
あいつが浮気…?できるわけない
俺のような恋人がいて浮気ができるんならゼヒ見てみたいものだ
その相手をな
次の土曜日、俺と香穂子は外で会うことになっていた
「どれもおいしそうですね〜〜〜」
目の前の高級フレンチを前に幸せそうな顔をしている香穂子
あの日からずっと観察しているが、こいつには微塵もやましさが感じられない
「先輩、私に何かついてるんですか?さっきから怖いぐらいに見てますよね…;」
「ん?面白い顔だと思って見てるだけだよ?気にしないで日野さん」
「………(むかっ)化粧室に行ってきます!」
香穂子がズカズカと席を立つ
――あんなわかりやすい女の浮気がわからないわけないか…
テーブルに置いてあった香穂子の携帯電話が振動する
ディスプレイを見ると
『ゆうくん』
――なに!?
俺はプライドも何も捨ててそのメールを読んだ
――――――――――――――――――――
かほちゃんへ
夜は楽しかったね。
かほちゃんとってもかわいい。
ぼく、かほちゃんのこと大好きだよ。
また遊びにいくね♪
ゆうより
――――――――――――――――――――
俺は携帯を閉じると店を出た
まさか…あいつが浮気していたなんて…
信じられない思いでいっぱいだ…
「先輩っ!」
後ろから香穂子が追いかけてくる
「もう…急にお店にいないから心配しましたよ…」
「心配?会計ならしてあっただろ?」
「そんな心配じゃありませんよ!先輩がどうしたのかなって…」
「へぇ…そういう嘘も平気で言えるようになったんだ?
彼に鍛えられたのかな?」
「は?彼?」
お前だけは信じていたのに…どんな俺を見ても変わることがないと…
「かほちゃん!」
「あ、ゆうくん」
驚いて俺は振り返る
え…?
香穂子が屈んで“ゆうくん”に挨拶する
「あれ、ゆうくん一人なの?」
「ううん、お母さんもいるよ。
かほちゃん、昨日のゲームの続きしよう!さっきメールしたんだよ」
「そうなの?ありがとう。
よぉ〜し、今日は私、負けないよ」
「かほちゃん、かわいいから、ぼく手加減してあげる」
そうして香穂子の頬にちゅっと口づける
誰だ…このガキは…
「あ、先輩、この子、ゆうくんって言って近所の子なんです。
公園でヴァイオリン弾いてたら、いつもいてくれて…」
「かほちゃんみたいな、かわいい女の子が一人だと危ないから
ぼくが見張ってるんだ!!」
そう言って香穂子をぎゅうっと抱きしめた
なんだ…そういうことか…
でも…気に入らないな…この俺をあんなに焦らせたんだから
それに生意気に…俺を威嚇してるつもりか?
俺はいつもの外向きの笑顔で接する
「そうなんだ…ゆうくん偉いね?でも、もう見張る必要はないよ…?」
俺は香穂子と同じように屈んで
“ゆうくん”に微笑むと香穂子の唇を塞ぐ
長く長く…
「こいつは俺の女だからな…」
「わぁぁ〜〜〜ん;;;」
まさに目の前で俺達のキスを見せられたゆうくんは
泣きながら母親の方に走って行った
「っ!!先輩!何もあんなことしなくても良いじゃないですかっ///」
「俺は世間の厳しさを教えてやったんだよ…」
面白いぐらいに顔が赤くなっている香穂子
やっぱりこいつが浮気なんかできるはずない
それにこんなに俺が焦った気持ちにも気付かない鈍感なんだから
「あれ…?ゆうくんが送ったっていうメール既に読まれてる…
先輩…もしかして…?」
香穂子が怪訝な顔で俺を見る
――変な所には気づきやがって…///
俺は香穂子の顎を捉えると上に向かせた
「なに?俺が見たって言いたいの?変なこと言ってると
……その口塞ぐぞ」
「めめめめ滅相もございません…っ///」
我ながら今回は情けない…
だけど俺が自分をコントロールできなくなるのはお前だけだ…
心からお前が
好きだよ
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<あとがき>
10000hitを記念して、魚月より応援してくださってる柚木ファンに捧げます☆
今回はちょっとカッコ悪い柚木さまですが、器用にこなせる彼のこーゆートコ
なんかかわいいなって魚月は思って描いてみました。
携帯見たこと反省してるんで、許してください(><)
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