「はい、香穂さんはオレンジジュースで良かったよね?」
「………うん。」
加地くんが飲んでるのはコーヒー
しかもブラックなんだよね
私はコーヒーが大嫌い…だって苦いんだもん
飲むとしても、思いっきりミルクや砂糖を入れてじゃないと…
そんな自分が何だか子どもっぽくて…すごくイヤ
加地くんとお付き合いするようになって…まだそんなに経ってないけど
なんていうか…加地くんって大人
エスコートしてくれたり、デートだって落ち着いた雰囲気の所だし…
そんな所でオレンジジュースなんか飲んでる自分って…
ホントに子どもっぽい;;
「…………交換して」
「え?」
「加地くんのと交換して」
「良いけど…コーヒー苦手じゃなかった?」
加地くんが不思議そうな顔で尋ねてくる
「いいの!飲みたいの!」
だって少しでも好きな加地くんに近づきたいもん
「じゃあ…お砂糖入れる?」
「入れないもん。そのまま飲む!加地くんと同じように飲む!」
まるで駄々を捏ねてる子どもみたいな私
困ったような顔をしながら加地くんが「どうぞ」と交換してくれる
黒に近いコーヒー…でも…
ゴクッ
に……にがい
「無理しない方が良いよ?
僕、こっちを飲んでる香穂さんも好きだけど?
それじゃ香穂さんはイヤ?」
加地くんが優しく勧めてくれるけど…
「別に無理なんかしてない…」
結局コーヒーは全部飲めなかった
あぁやって加地くんに気を遣わせてること自体…
私が子どもだってことだよね…
はぁ…何やってんだろ…こういうの空回りっていうのかな…
お店を出るといかにも私より年上のカップルがいた
彼氏のわがままを彼女が受け止めてて…
なんだか今の自分にないものを見せつけられた気分だ
「飴食べる?もらってきたから。」
――私が苦いなって思ってること知ってて……
ますます、自分の未熟さが浮き立つ
何で私は加地くんに…大好きな人に…
もっと余裕のある態度で接したいのに
俯いたまま黙ってる私をサラっと流して
加地くんは「じゃ僕が食べよう」って言っていた
「やっぱり…僕には甘すぎるかな?だから口直しさせて?」
私の唇を塞ぐと同時に口内に加地くんの舌が侵入する
そのまま私の中に飴を残していった
「香穂さんにもうコーヒー飲んで欲しくないな」
私の唇を解放した加地くんが呟く
「どうして?」
「だって香穂さんも同じもの飲んでたらコーヒー飲むたびに、キスしたくなっちゃうよ。
香穂さんにはいつでも甘い味でいて欲しいな…って僕のわがままだけどね」
にっこりと微笑む加地くんは…やっぱり大人で…
敵わない
「そしたら、私も加地くんで苦いのを克服すれば良いかな?」
「克服しなくても良いよ…そしたら、ずっと僕を求めてくれるでしょ?」
にっこり笑ってまた口付けが降りてくる…
彼の口付けが苦いなんて嘘
どこまでも…甘くて…
求めずにはいられない
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<あとがき>
は…恥ずかしい///本当に恥ずかしい///
そして…加地ファンに向けて魚月より10000hitお礼作品です☆
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